【目次】
原田茶飯事ロングインタビュー
1.DIYなシンガーソングライター(8/1公開)
4.“友達”を照らしていく音楽(8/6公開)
4人が語る、原田茶飯事というミュージシャン
「絶対的な良さがあるから、ひねくれたポップを歌える」
——森達彦【サウンドプロデューサー】(8/1公開)
「ポップさの裏に潜んだ『仕掛け』」
——キイリョウタ【梅田シャングリ・ラ店長】(8/2公開)
「『晴れているんだけど、ちょっと寂しい』――そんな人にも目を向けてくれる音楽」
——古川陽介(dj sleeper)【りんご音楽祭・瓦レコード主催】(8/5公開)
「ライブでの歌声がCD以上に魅力的」
——DJ YOGURT【DJ】(8/6公開)
――ところで、茶飯事さんはソロ活動のスタートと同時に、活動拠点を大阪から東京へ移していますね。これはどうしてですか?
大阪でやっていた「クリームチーズオブサン」って、
自分がやっとピン!とくるメンバーと出会えたバンドだったんですよ。
でも、メンバーが抜けて、新しい人を探して、また抜けて……の繰り返しで。
カッコイイ音を出す人がいても、
すでに他のバンドのメンバーとして忙しく活動していたりして、
なかなかメンバーが見つからない。
でも、東京って、みんな夢を持って出てくる場所じゃないですか。
才能があって、なおかつ努力もする人間が集まってくるところなんで、
いろんな人と出会えるんじゃないかなと思ったんです。
――音づくりへの強いこだわりが透けて見えてくるようです。その分、バンド編成でライブをする時のメンバーへの信頼は厚いものなんでしょうね。そのこだわりの強さは、レーベルなどに所属しない現在の活動スタイルにも表れているように感じますが、当時のクリームチーズオブサンの注目度を考えると、いろいろとお誘いもあったのではないですか? 音楽ニュースサイトの『ナタリー』では、茶飯事さんのソロ活動を知らせるニュース記事を現在も見ることができますね。
そうですね。
「うちで出しませんか?」っていう
お話も過去に数件いただきました。
でも、当時の僕は異様に頑固で、
自己評価が高すぎたのでリリース話はポシャるばかりでした。
あとは、バンド時代にレーベルから出したCDがあるんですけど、
そのレーベルがなくなってCDが宙ぶらりんになってしまったんですよね。
権利の問題もあって再発もできない……いわゆる「廃盤」です。
自分の作品に思い入れがあるからこそ、
ちょっと慎重になっていた部分もあったというか。
当時は、音楽業界の人の意見をまったく受け入れられなかったんですよ。
でも、今になって、あの時言ってもらったことが生きている部分もあって。
今は、面白いと思えることの感覚が近くて、
信頼できる人と一緒に仕事をしていきたい気持ちもあるんです。
――お話をお伺いしていて、茶飯事さんは現在、これまでとは違う変化を求めているのかな、と感じました。『光るジュレのなかから』を全国流通盤としてリリースするのも、そういうことなのかなと。今までは通販や親交のあるお店、ライブ会場での販売などが中心でしたが、今回は全国のレコード店に茶飯事さんのCDが並ぶことになります。
そうですね。
最近になって、ようやく「自分の曲を表現する上で、
これだけのスキルは最低限ないとダメ」っていうラインに
届いたような気がしてるんですよ。
なので、今回のアルバムが広く知ってもらうきっかけになれば。
「原田茶飯事、おもしろい音楽やってるやん」って人が増えればいいなと。
名刺代わりの作品ですね。
でも、捨てたもんじゃないですよね!
タワレコさんとか、今回コメントをくださったみなさんとか、
メジャーな人とたくさん仕事している人たちが、
こんな34歳のシンガーソングライターを「いい」と言ってくれるんですから。
腐らずに自分がいいと思う音楽をやり続けるっていうのは、いいですよね。
だれかが、どこかで見てくれてたんだっていう。
実際、30代っていったら、
音楽業界的にはよっぽどのことがない限り、
興味をもたれないイメージがあって。
スガシカオさんが30歳でデビューしたっていうのも、
異例中の異例みたいな空気がありましたし。
――そういう不安もありましたか?
ありましたね。
というか、今でも定期的にあるんですよ。
年間で2・3日ではあるんですけど。
でも、ライブをするとお客さんからの反応があるじゃないですか。
ライブをしたら、した分だけ、自信は回復していくんですよね。
だから、お客さんやファンの人たちに助けてもらっている感じというか。
家で曲をシコシコつくり続けるだけだったら……
うん、不安に押しつぶされもするんでしょうけど。
ライブが救ってくれてますね。
恥ずかしい言い回しですが、文字通り「LIVE(生きる)」ですよね。
生きている実感が、人のフィルターを通して感じられる。
生かされてる感じ、しますね。
――同じように、そのライブで茶飯事さんの音楽を好きになった人が、「はだかのうた」に日々の活力をもらっているんだと思います。大きな変化の節目にいる今、これからの活動の展望について教えてください。
「原田茶飯事だから聴こう」と思ってもらえるようになりたいな、と。
幅広い層の人に僕の音楽を聴いてもらいたいと思う反面、
自分の音楽がマニアックになればなるほど、
いわゆる一般のリスナーからは遠ざかっていくじゃないですか。
でも、それを止めるわけにはいかない自分もいて。
極端にわかりやすく聴ける作品ってなると、
「作品づくり」の意味が変わってきてしまうように思うんです。
その歩みを止めずに、いろんな人に聴いてもらうには、
「この人のことが好きだから、この人の音楽を聴いてみよう」
っていう部分が大事になってくるんじゃないかなって。
良さを理解しようとしてくれる、というか。
僕はCDを100万枚売りたいわけじゃなくて、
自分がある程度納得いくものを、それなりの数の人に
「一生聴く」と言ってもらえるようにしたいんです。
僕の好きなワールドミュージックや
1970年代の日本の音楽に興味がない人、
音楽マニアじゃない人にも僕のフィルターを通して、
その音楽の魅力が届くような作品をつくっていきたいな、と。
――ありがとうございます。8月からは全国でリリースツアーが開かれますね。そのほかにも複数の音楽フェス、ライブイベントへの参加も決まっており、ライブづくしです。
僕さっき、「模様替えとフリスビーと楽器集めくらいしか趣味がない」
って言ったんですけど、そういえば「曲づくり」も趣味の一つですね。
自分の曲をライブで演奏して、
お客さんが目の前で笑ったり、
楽しんだりして踊ってくれる。
そういうのを目の当たりにすると、やめられないんです。
音楽から離れられない人って、
そういう中毒に冒されている人が多いと思う。
僕も完全にその一人。
やっぱりね、人間だれしもがどこかで「必要とされたい」とか、
「人のために」とか「喜んでほしい」みたいな気持ちってあると思うんです。
「ライブ」っていう、自分が気持ちいいと思えることで
だれかに喜んでもらっているっていうのは、
音楽を続ける最高の原動力かなって。
楽しくて楽しくて、だれも損していない感じ
——すごいいいですよね。
原田茶飯事(はらだ・さはんじ)
大阪府出身。関西を中心に活動していた「クリームチーズオブサン」が解散した翌2009年から、ソロ活動を開始。ガットギターを片手に年間150本以上のライブを行い、全国を渡り歩いている。8月1日に最新アルバム『光るジュレのなかから』をリリースし、現在リリースツアー中。
http://haradasahanji.com
『光るジュレのなかから』
2013年8月1日発売
¥2,200- TMT-0005
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【収録曲】
1.はだかのうたをください
2.金色の人生
3.あしたも晴れるな
4.ひみつの茶飯事
5.ピクニック
6.冬がはじまると
7.青空でも曇り空でも
8.光るジュレの中から
9.すきだよ
10.夜更かししよう
11.フジヤマ(世界遺産記念BONUS TRACK)