【目次】
1.編集者じゃないからこそ、つくれたメディア(11/22公開)
2.「インタビュー」じゃなくて「おはなし」(11/23公開)
3.「すべてのことは普段の言葉で説明できる」(11/26公開)
【プロフィール】
加茂宏一(かも・こおいち)
Webディレクター。1981年生まれ。Web制作会社での勤務を経て、2010年に独立。現在、マークアップエンジニア兼WebディレクターとしてWebサイトの制作などを行なうほかに、有料メールマガジンの電子書籍化や映画製作の広報など、多方面で活動している。
――『フダンヅカイ』は、「ほかとはちょっとちがう、お話メディア」と銘打っているだけあって、いわゆる“普通のメディア”とは異なる点がいくつかありますね。制作者である加茂さんが記事中の写真に出ているのが、そのわかりやすい一例かと思います。
写真に写ろうとは思っていないんですけど、写っている写真も使っちゃいます。
「こういう人がつくっているんだ」「この人はこういう風に喋るんだ」というのがわかると、
読者の人たちがその場の雰囲気を想像しやすいんじゃないかなと思って。
「空気感」はすごい大切にしています。
――「編集者は黒子たれ」という暗黙のルールようなものがあって、僕のような制作サイドは基本的に前面に出ないことが多いんです。なので、和気あいあいと話している加茂さんたちの写真を見ると、うらやましさもあります。
うらやましさですか! それは想像していなかったのでビックリしました。
しっかりしたメディアだったら、僕も黒子になっていいと思うんですけど、
『フダンヅカイ』は「それとは違うものをつくる」という姿勢を明確にしたいんです。
――記事の中で常に話の聞き手(加茂さん)の名前が出ているのも、そういう理由からでしょうか。『東京黎明ノート』もそうですが、全角ダッシュ(「――」)で表示することが多いじゃないですか。
だれがお話を聞いているかが分かったほうが、
読者は安心するんじゃないかなと思って。
これは別に自己主張したいわけではなくて、
僕自身、そういうものが好きなんです。
つくり手の顔が見えるというか。
たとえばAという会社があったとしたら、
その中の「だれだれさん」という存在を通して、
その会社の中身が少し見えてくるようで。
それに、「だれだれさんが面白いから、A社と仕事したい」と
思う人も出てくるかもしれないじゃないですか。
そういう繋がりも生まれればうれしいなと思います。
それに、今の聞き手は僕一人ですけど将来的にスタッフが増えたら、
そのほうがスタッフの個性も分かりやすいと思うんですよね。
――そういった細かい一つひとつの点が、『フダンヅカイ』の「ほかとはちょっとちがう」雰囲気を出しているんだと思います。「安心」という言葉がありましたけど、『フダンヅカイ』は確かに見ていて落ち着くんですよね。
ありがとうございます。
うちの場合、「記事」というよりは「ダイアローグ(対話)」というか。
僕とだれかが「おはなし」している雰囲気がそうさせるのかなと思います。
というのも、僕はインタビュアーではないので。
だから、うちではインタビュー記事のことを「おはなし」と呼んでいるんです。
――そういえば、『フダンヅカイ』に掲載されている加茂さんのプロフィールを見ると、肩書きが「インタビュアー」でもなく「編集者」でもなく、「代表」となっていますね。これはどういう理由からなのでしょう。
僕は編集をやったこともないし、インタビュアーでもない。
その肩書きのプロではないんです。
それなのに「編集者」「プロデューサー」としてしまうと、
プロとして本職でやっている人たちに失礼だなと思って。
それに、制作では本職の編集者の方が手伝ってくださる時もあるんですけど、
その時に僕が「編集長」という立場になってしまうと変じゃないですか。
なので、自分はあくまで『フダンヅカイ』というプロジェクトの「代表」なんだと。
それが、自分のやっていることを一番端的に表せる言葉なんだと思います。
――お話を聞いて、『フダンヅカイ』は編集者でもインタビュアーでもない加茂さんだからこそ、つくることができたメディアなのだと改めて感じました。
いわゆる「普通のメディア」とは意識的に変えている部分もありますが、
編集者の方や、しっかりとしたインタビューができる人たちの
ことは本当に尊敬しているんです。
『フダンヅカイ』は本当に普通の言葉になっちゃっているので、
正直なところ「物足りない」という人もいますし。
でも、うちはそういう人たちじゃなくて、
「おもしろい人のおもしろい話を聞きたい」っていう
人たちが集まってくれればいいのかなと思っていて。
他のサイトを批判しているわけじゃないんです。
甘いものが好きな人もいれば、
からいものが好きな人もいるじゃないですか。
それでいいと思うんです。
『フダンヅカイ』さんでは、『東京黎明ノート』を取材していただきました。
同じく11月22日から全4回にわたって公開中です。