「東京、日本のファッションを終わらせない」というメッセージのもと、4月20日(水)から22日(金)まで六本木アカデミーヒルズ 40で開かれた、アッシュ・ペー・フランス主催のファッションイベント「roomsLINK(ルームスリンク)」。東日本大震災の影響で3月の「東京コレクション・ウィーク」が中止となり、同展示も約1カ月延期するという特別な状況の中、前進していくパワーを見せた新進気鋭のブランドを紹介する。また、「roomsLINK」のディレクターを務める松井智則さんのインタビューも掲載する。
取材・文=石川裕二(石川編集工務店)
1.「会場レポート」(4/29公開)
2.「PICK UPブランド」(4/29公開)
3.「ディレクターインタビュー」(5/13公開)
「roomsLINK』を開く意義
『roomsLINK』ディレクターの松井智則さん
ーー震災の影響で約一カ月延期して開かれたファッションイベント『roomsLINK 03』ですが、イベントを終えてみての感想をお聞かせください。
前回よりも多くの方(約8600人)が国内、アジアから足を運んでくださったことを嬉しく思っています。また、海外のブランドを除けば、予定していた全てのブランドが出展するなど、大変な状況下にも関わらずご協力いただけたことに感謝しています。
今回、日程が延期した以外にもさまざまな震災の影響がありました。一つ例をあげれば、予定していたファッションショーは当初、節電などの関係でブランド側が中止を考えていました。しかし、それでは海外のバイヤーやプレスが「東京は危ない」と感じてしまい、日本への足が次回以降も遠のく可能性があります。そうなると、日本のファッションビジネスが本当に終わってしまうんですね。海外の人たちに「東京は大丈夫」という姿勢を見せる意味でも、ファッションショーはやるべきだと考えました。
そこで、改めてブランド側に声を掛けたところ、多くのブランドが『roomsLINK』内外を問わず、会期を合わせてショーの開催を表明してくださりました。また、展示会においても服をつくる工場が被災してしまうなど、不安もある中で60ブランドが参加してくれました。ありがたく思います。
ーー『roomsLINK』の開催決定を知らせるメールマガジンでは、松井さんの「こんなにも日本という国にお金が必要な中で、ファッションビジネスをしている僕らが考える『復興』とは…国内外のファッションと関わっている人々が、ビジネスを成り立たせる為に必要な場を作っていく事。それこそが前にすすめるということだと信じています。」というメッセージが添えられていました。3月下旬に開かれる予定だった『東京コレクション・ウィーク』(JFW推進機構主催)が中止したなかで、会期を延期してでも『roomsLINK』を開く意義やその役割について、どうお考えでしたか?
「東京は大丈夫だ」ということを海外の人に伝える――それが今回の『roomsLINK』の役割であり、イベントを開催する意義でもありました。また、イベントを中止しないということは、社会への還元でもあります。イベントを開けば、来場したバイヤーがブランドの商品をオーダーする。そして、ブランドにはお金が入り、ブランドから国に税金が納められる。イベントを開くことで、ビジネスが成立し、お金が回っていくと考えています。
ーー出展者、来場者などの様子から、これまでのイベントとの雰囲気の違いなどは感じましたか?
参加してくださった人たちの意気込みや一体感を感じました。開催前には関係者へのイベント告知に力を入れるなどのほかに、出展者は来場者へ積極的に声を掛けるなど、会場にも活気がありました。「ビジネスに結びつけよう」という思いが強かったのだと思います。
これまで日本のブランドは、合同展示会でどうビジネスすればいいのかが分からなかった。海外のブランドが「前に前に」というのに対して、日本のブランドはどこか受け身的でした。
というのも、日本でコレクションウィークが生まれてから、日が浅いんです。コレクションウィークがある環境で育った海外のブランドと、そうでない日本のブランドではアプローチの仕方に感覚的な差が出てしまうのは仕方がありません。そんな中、今回の『roomsLINK』に参加した日本ブランドは、本来の合同展示会でのアプローチに近づけたのでは、と思います。
ーー最後に、今後の『roomsLINK』の展望をお聞かせください。
最終的には、『roomsLINK』というイベントを、アジアを代表するコレクションウィークに成長させていきたいと思っています。海外から東京に呼び寄せられるイベントであることが重要です。というのも、2008年のリーマン・ショック以降、国内の販売だけではビジネスが成立しないブランドが出てきてしまったんですね。そこで、「国内だけではなく、海外からも来場者を集めよう」と『roomsLINK』が誕生しました。
今後、来場者がさらに増え、東京から世界に向けて発信したいブランドがアジアをはじめ海外から集まれば、企業間の取引が成立します。その波及力が強まっていけば、メディアへの露出も増え、一般の人にも知られていく。そこからさらに、一般の人や企業が入ってくるようになればイベントとして成熟していきますし、「『roomsLINK』に出展すればビジネスが生まれる」となれば、若手のデザイナーが育ち、再びそのイベントを発展させてくれます。
いいブランドが日本に多く生まれれば、文化水準が上がり海外からの観光客が増えます。たとえば、「せっかくコムデギャルソンを買いに日本に来たのだから、京都にも行ってみよう」というように。『roomsLINK』に参加してくれた一つひとつのブランドも将来、自分たちがファッションという切り口で日本の文化水準を上げることに貢献できるとわかるのではないでしょうか。
何十年掛かるかは分かりませんが、私達が掲げる未来像に向けて、一歩ずつ進んでいきたいと思います。