【目次】
1.編集者じゃないからこそ、つくれたメディア(11/22公開)
2.「インタビュー」じゃなくて「おはなし」(11/23公開)
3.「すべてのことは普段の言葉で説明できる」(11/26公開)
【プロフィール】
加茂宏一(かも・こおいち)
Webディレクター。1981年生まれ。Web制作会社での勤務を経て、2010年に独立。現在、マークアップエンジニア兼WebディレクターとしてWebサイトの制作などを行なうほかに、有料メールマガジンの電子書籍化や映画製作の広報など、多方面で活動している。
――加茂さんは現在フリーランスのWebディレクターとして活動していますが、インターネットの業界に入ったのには、どういう経緯があったのでしょうか。
高校時代、ホームページをつくろうと
思ったのがそもそもの始まりです。
インターネットが普及し始めたのは
僕が高校を卒業する直前だったんですけど、
皆が集まれる機会をつくれないかなと考えた時に、
「インターネットでホームページをつくれば、
パソコンでだれでも見れるらしいぞ」ということを友人から聞いて。
前々からモノをつくりたい欲求はあったんですが、
僕は美術的なセンスがないし、手先が器用じゃなくて。
でも、キーボードを打つのに特別な手先の器用さは関係ない。
実際にホームページを完成させてみて、「モノをつくれた」という
実感を得られたのがコーディングだけだったんです。
――それを仕事にしようと思ったのは、いつ頃からだったんでしょう。
単純に、自分にはそれ以外に仕事として
成立させられる能力がないと思ったんです。
それくらい、大学時代はホームページをつくっていたので。
当時は今のような光回線がなくて、
ダイヤルアップという接続方法でした。
使用料金も1ヶ月の内に2時間くらいまでは定額なんですけど、
それ以上は従量課金というような時代で。
その頃は今ほどインターネットが普及していなかったので、
ホームページをつくれるのは一握りの人たちだけでした。
しかも、その人たちというのは、奇人・変人ばかりで(笑)。
でも、楽しい場所でした。
当時のインターネットは平和でしたね。
――「平和」というのは?
現在のように暴言があふれるような場所ではなかったんです。
もっと筋の通った批判が多かったというか。
今のインターネットって、ギスギスしているように思います。
たとえば、著名人の方の発言や行動が批判されると、
すごい勢いで「炎上」するじゃないですか。
あとは、読者やソーシャルメディアでつながっている
“オーディエンス”を意識するあまりに、自分が思っている以上の
強い言葉で発言したものが拡散されて批判・炎上してしまったり。
格好着けずに、もっと普通の言葉で喋れる場所が
あっていいんじゃないかなと思うんです。
インターネットは「言いたいことを言える」のが
良いところとされていますけど、
今はそれができなくなっていますよね。
むしろ、その逆というか。
――一般の方のケースでも、その人の勤務先や学校に「飲酒運転などの書き込みをしている者がいる」と連絡するような「炎上」の仕方もありますね。書き込みが原因で学生が退学を余儀なくされたりしたケースも記憶にあります。
はい。そこまでしなくていいんじゃないかなって思うんですよね。
前提として、飲酒運転などはしてはいけないし、
書くことでもないと思うんですけど。
でも、自分のことを棚にあげて、
他人を社会的に抹殺させるほどの悪意を
向ける人が増えたように思うんです。
その人の局地的な“黒”の部分がクローズアップされて、
何千・何万という人にそのイメージを持たれてしまう怖さがある。
そういうのを減らしたいですし、
「もう少し平和でいいんじゃない?」と思います。
――『フダンヅカイ』は、その黎明期からインターネットを楽しんで来た加茂さんの理想の場所でもあるんですね。
砂漠の中にあるオアシスのような存在になれればうれしいです。
だって、そういう場所では皆、ケンカもしづらいじゃないですか。
『フダンヅカイ』のスタンスをいいな、と思ってくれる人が増えて、
昔のインターネットのような雰囲気をもう一度つくれればいいなと思うんです。
「フダンヅカイについて」というページに書かれている内容。ここにも“フダン”の言葉がある。
※「次に進む」で編集後記に移動します!
『フダンヅカイ』さんでは、『東京黎明ノート』を取材していただきました。
同じく11月22日から全4回にわたって公開中です。