Nico Vol.3「ブランドの立ち上げ」

「自然を感じるアクセサリー」をテーマに、オリジナル性あふれる作品を発表しているアクセサリーブランド「Nico」。デザイナーを務める奥村仁幸に、ブランドのコンセプトや作品の特徴、ブランド立ち上げの経緯などを聞いた。現在のアートワークや学生時代の作品と共に紹介する。

【プロフィール】

奥村仁幸(おくむら・にこ)。「Nico」デザイナー。1985年生まれ、和歌山県出身。専門学校ヒコ・みずのジュエリーカレッジ アートジュエリーコースを卒業した翌2008年、アクセサリーブランド「Nico」を立ち上げる。アクリルの中に花や野菜などを入れたものや、コーヒー豆などをモチーフにしたアクセサリーを発表している。
Nicoホームページ=http://nicodesign.jp/index.html

取材・文=石川裕二(石川編集工務店)
写真=金子麻也

1.「指先に、自然を」(5/6公開)
2.「地球が素材」(5/7公開)
3.「ブランドの立ち上げ」(5/20公開)
4.「あたらしい作品、これからの『Nico』」(5/20公開)

3.「ブランドの立ち上げ」

退職後に襲った資金難
「旅館でバイトしていました」

ーー山梨に住み始めた2008年に「Nico」を立ち上げています。ただ、当初は名前が違いましたよね?

はい。当時は「Sourire(スーリール)」という名前でやっていました。ちなみに、「スーリール」はフランス語で「笑う」という意味で、僕の名前(にこ=笑う)から取りました。なぜフランス語かというと、「ファッション=フランスだろう」みたいな、本当にもう単純に(笑) でも、「これじゃないな」っていうのがあって、09年に今のブランド名に変えたんです。自分の名前ですし、あと、呼びやすいですし(笑)

ーー08年10月にブランドを立ち上げ、09年の1月には国内外のバイヤー、メディアを対象にしたファッションイベント『rooms』に出展しています。このイベントがブランドのデビューでもあり、アクリルシリーズを初めて披露したときでもありますね。

はい、『rooms』開催の3カ月くらい前にアクリルシリーズの具体的な表現方法を思いついたんです。それまでは、なんとなくイメージがあったくらいなんですけど。最初、『rooms』にはクロスのチョーカーを出そうと考えていましたから。今とは全然違いますよね(笑) でも、どこのブランドでもやっているようなものを出しても、何十倍という競争率の出展審査には通らない。「これ(アクリル)に賭けてみよう」という思いで、ひたすら制作していました。

最初の頃は失敗ばかりでした。キレイに仕上げるために、アクリル内の泡を取る機械が必要なんですけど、当時はそれも買っていませんでしたし。というより、そのときは本当にお金がなくて、『rooms』に出展するために近所の旅館で朝から晩までアルバイトしていましたからね。

結局、技術面でも、自分だけではどうにもならなかったので、通っていた専門学校に行って、先生方にアドバイスをしてもらったんです。そこで、だんだんクオリティが上がってきました。出来上がったものを見たときは手応えを感じましたけど、「やっとスタートラインに立てた」という気持ちのほうが強かったです。

でも、実は1回、審査で落ちてしまったんですよね。悔しくて悔しくて、「何でダメなんですか!?」って主催会社に電話をしたら、「じゃあ、もう1回見るので、資料を作り直してください」と言われて。それで、資料をもう一度推敲(すいこう)して作り直したら合格したんですよ。本当、あそこで諦めなくて良かったです。『日経MJ』などの全国メディアに紹介してもらったり、ブランドを広めていくいいきっかけにもなったので。


トマトピアス(¥18,900)


コーヒー豆ネックレス(¥14,700)

失敗続きの日々を支えた“人”
ーー『rooms』での反応はいかがでしたか?

ビジュアル的にめずらしかったと思うんですけど、反応はすごい良かったです。でも、今思うとその頃は完成度がまだまだで、すぐに売れたかというと別の話でしたね。サイズ感などをもう一度考え直す必要があって。

そういう試行錯誤は『rooms』の後に何度も何度も繰り返しました。アクリルの中に空気が入ってしまったり、中に入れる素材の性質をちゃんと理解していなかったりで、金額にすると70万円分くらいは失敗の山を築いていますね。貯金はどんどん減っていって、気持ち的にも「もうダメかもしれない」と思うようになり、何回もくじけそうになりました。

そういう思いがピークだった10年の1月、東京ビッグサイトで開かれたバイヤー、メディア向けの展示会『INTERNATIONAL FASHION FAIR(インターナショナルファッションフェア、以下「IFF」)』に出展しました。審査に受かるとミラノに行けるというもので、海外進出の足がかりになればと思ったんです。それに受からなかったら、もう諦めようとすら思っていました。

でも、そこで「IFF」の方から直接激励の言葉をいただいて、出展したら良い反応も還ってきて。今、制作も営業も経理も、全部僕がやっているんですよ。一人でやっている分、だれかの一押しって本当に心強いというか。その方には感謝の気持ちでいっぱいです。実は、ブランド名を「Nico」に変えたのもこのときなんです。背水の陣で望んだ展示会なので、「変えるなら今しかない」と思って。今思えば、『IFF』がターニングポイントでしたね。

ーー苦労を乗り越えて、今の状況があるわけですね。

失敗は今でもあります。新しいものをつくるときは失敗が付き物ですし、一回で思い描いたものが出来たことはないですね。独学だからこそ、あそこまで失敗したんだと思うんですけど、そのお陰で今は「何でも聞いてよ」みたいな感じです(笑) 

でも、やっぱり、人の支えがあってこそだと思うんです。『IFF』直前のつらいときに、お客さんからお店を通じてメールが来たんですよ。アクリルシリーズで結婚指輪のオーダーをいただいたんですけど、そのご夫婦からお礼のメッセージと、実際にリングを着けている写真が送られてきて。自分のアクセサリーで一人でも喜んでくれる人がいるなら、やっていかないといけないな、と。まあ、でも、好きなことをやっているんで、あまり「つらかった」というような思い出ではないですね。


パセリピアス(¥18,900)


ペッパーブレス(¥14,700)

> 4.「あたらしい作品、これからの『Nico』」

【出店情報】
「イベントショップ」
日程:5月17日(火)~30日(月)
時間:10:00~19:00
場所:そごう 横浜店 B1Fトランスマーケット

「イベントショップ」
日程:5月26日(木)~31日(火)
時間:10:00~20:00
場所:東京ますいわ屋 名古屋サカエチカ店

「イベントショップ」
日程:6月9日(木)~15日(水)
時間:10:00~21:00
場所:東急百貨店 渋谷駅・東横店 2Fアクセサリー売り場