4.「漫画編集者から見たWEB漫画」
追記:2012年6月1日
【一部ブログサイトによる、本サイト記事の内容の曲解について】
さる5月31日、一部ブログサイトにおいて、『東京黎明ノート』内
「コミック界の新たなる潮流 WEB漫画が拓く未来 Vol.4」での、
話し手の発言を曲解した内容の記事タイトルが掲載されました。
同記事のタイトル及び内容は、
話し手の真意とは異なるように編集されたものであり、
読者のミスリーディングを招くような記事を掲載されたことは
大変残念であり、きわめて遺憾です。
東京黎明ノート編集部では、
同ブログサイトに対して該当記事の修正・削除を求め、
適切に対応してまいります。
「一部ブログサイトによる、本サイト記事の曲解に関する検証記事」を読む
東京黎明ノート編集部
インターネット上で無料公開されている「WEB漫画」。近年、書籍化やアニメ化をはじめ、WEB漫画界で活動していた作者が商業誌にデビューするなど、徐々に盛り上がりを見せている。『東京黎明ノート』では、WEB漫画作家をはじめ、漫画編集者のインタビューを通して、WEB漫画が持つ可能性を紹介する。
※本サイトで指す「WEB漫画」は、出版社が運営するコミックサービスではなく、基本的にプロデビューを目指す個人や漫画を趣味で描いている人が自身のWEBサイトなどで公開しているものとする
取材・文=石川裕二(石川編集工務店)
1.「イントロダクション」(1/7公開)
2.「『ワンパンマン』作者.ONEインタビュー」(1/14公開)
3.「『オーシャンまなぶ』作者.拓須たくすインタビュー」(1/21公開)
4.「漫画編集者から見たWEB漫画」(1/28公開)
SPECIAL1.「ONE 書き下ろし1p漫画」(1/14公開)
SPECIAL2.「拓須たくす 書き下ろし1p漫画」(2/3公開)
SPECIAL3.「読者プレゼント」(1/28公開)
【プロフィール】
石橋和章(いしばしかずあき)
「週刊少年サンデー」編集部所属。同誌で連載中の『マギ』(大高忍)の担当を務めているほかに、『神のみぞ知るセカイ』(若木民喜)の立ち上げ時に担当を務めた。スクウェア・エニックス時代には『すもももももも~地上最強のヨメ~』(大高忍)を担当。『WORKING!!』(高津カリノ)、『荒川アンダー ザ ブリッジ』(中村光)においては、立ち上げ時の編集を担当した。
「WEB漫画」という新たなる潮流
――石橋さんは現在「週刊少年サンデー」の編集者として働いていますが、スクウェア・エニックスに勤めていた2004年にWEB漫画『WORKING!!』(高津カリノ)の商業誌展開を企画し、担当編集を務めています。当時、WEB漫画にどのような可能性を感じたのでしょうか。
WEB漫画を描いている方たちは「漫画家になりたい人」ではなくて、「漫画を描くのが好きな人」だと思います。商業誌で活動している作家の方は漫画を描いてお金を稼いでるわけですが、WEB作家の方たちは無料で漫画を描いて公開している。驚いたのと同時に「漫画を描きたい」という情熱だけで何百ページ、何千ページと作品をつくり続ける純粋な気持ちに惹かれるものがありました。個人的な意見ですが、「漫画家になることを目標としている人」の漫画よりも、「漫画を描きたい人」の作品のほうがより多くの人を楽しませられると思っています。WEB漫画を描いている人たちは、まさにその後者ですね。
――WEB漫画はいつ頃からチェックしていたのでしょうか。
スクウェア・エニックスに入社した01年からです。当時は創刊間もない漫画雑誌の所属だったこともあり、新人編集者である私にまで担当作家が割り振られなかったのです。「それなら、自分で探そう」と「Web Comic Ranking」の中から、おもしろいと感じた作家の方に声を掛け始めたのがWEB漫画との出会いです。その最たる例が『WORKING!!』の高津さんで、作品を見た瞬間に「商業誌でも充分通用する」と感じるレベルのものでした。そこで、当時の編集長にプレゼンをして04年末から連載する運びとなりました。
それまで、雑誌で連載するには大きく分けて3つの潮流がありました。一つは新人賞の受賞。そして、同人誌界からのスカウト。最後に、他誌からの引き抜き。高津さんの場合は、それらのいずれにもあてはまらずに連載デビューを果たした異例のケースです。
――その当時から約7年が経っています。現在、漫画編集者の方々から見て、WEB漫画とはどのような位置づけにあるのでしょうか。
まだ黎明期であることには変わりないと思います。認識が広まり、本格的に注目されるのはこれからでしょう。ただ、『Axis powers ヘタリア』や『WORKING!!』のようにWEB漫画発の作品が成功した例もあるので、近年WEBからデビューした方たちが近い将来結果を出した時にその評価も変わるはずです。
これは商業誌でも同じことが言えますが、WEB漫画では絵のきれいさに関わらず本当におもしろい漫画が人気になっています。近年、商業誌では絵の上手な新人作家を育てる傾向がありますが、作品づくりにおける個性を伸ばすのが難しく、花が開かないままということも珍しくありません。逆に、WEB漫画界で活動してきた作家の方は、WEBというフィールドで実戦を積みながら自分の才能をメキメキと伸ばしてきた人たちばかり。人気作品は1日約2~3万PVを記録するなど、インターネット上での市場調査の答えも出ています。
WEB漫画発の作家の方たちには、漫画界を変える力が秘められています。私は編集者として、漫画で人を楽しませる才能を持った彼らに活躍する場を提供していきたい。そして、私たち編集者が商業誌で培ってきた仕組みやノウハウ、流通が彼らの作品と組み合わさることで、より良いものが生まれると確信しています。
――石橋さんは、現在もWEB漫画の作家に声を掛けているとお伺いしています。お話しできる範囲で結構ですので、今後の展望をお聞かせください。
WEB漫画界で活躍している方たちと何か一緒にできればいいな、と考えている最中です。私は、作家さんにとって一番最初の読者。学校のクラスメイトに「この漫画すごいおもしろいぜ!」と回し読みを始める立場なんです。まだ企画段階ではありますが、なんとか実現させて「おもしろい漫画」を読者の方に提供していきたい。自分が「いい」と思ったものを、読者の方にも「おもしろい」と言ってもらえるのは編集者にとって何よりの幸せなので。