インターネット上で無料公開されている「WEB漫画」。近年、書籍化やアニメ化をはじめ、WEB漫画界で活動していた作者が商業誌にデビューするなど、徐々に盛り上がりを見せている。『東京黎明ノート』では、WEB漫画作家をはじめ、漫画編集者のインタビューを通して、WEB漫画が持つ可能性を紹介する。
※本サイトで指す「WEB漫画」は、出版社が運営するコミックサービスではなく、基本的にプロデビューを目指す個人や漫画を趣味で描いている人が自身のWEBサイトなどで公開しているものとする
取材・文=石川裕二(石川編集工務店)
1.「イントロダクション」(1/7公開)
2.「『ワンパンマン』作者.ONEインタビュー」(1/14公開)
3.「『オーシャンまなぶ』作者.拓須たくすインタビュー」(1/21公開)
4.「漫画編集者から見たWEB漫画」(1/28公開)
SPECIAL1.「ONE 書き下ろし1p漫画」(1/14公開)
SPECIAL2.「拓須たくす 書き下ろし1p漫画」(2/3公開)
SPECIAL3.「読者プレゼント」(1/28公開)
人気WEB漫画『ワンパンマン』の作者がプロデビュー
WEB漫画の盛り上がりを象徴するのが、先ごろ商業誌デビューを果たしたWEB漫画『ワンパンマン』の作者ONEさん。さる4日に発売した「週刊ヤングジャンプ 6・7合併特大号」(集英社)では、ONEさんが原作を担当した読み切り作品『怒濤の勇者達』が掲載されている。同作品は、過去に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載され、アニメ化もした『アイシールド21』の作画担当である村田雄介さんとタッグを組んだもの。同誌の公式サイトには『怒濤の勇者達』の特別予告ページが設けられており、ONEさんは「WEBコミック界の英雄(カリスマ)」として紹介されている。
2009年からWEB上で公開されている『ワンパンマン』はインターネット上の口コミで人気が広がり、現在では1日約2万アクセスを記録。約4000作品が登録する「Web Comic Ranking」では常に上位(1/6現在の週間ランキングでは4位)をキープしている人気作品だ。
同作品は、元々「新都社(にいとしゃ)」という漫画や小説の投稿サイトに掲載していたもの。『怒濤の勇者達』が掲載された「週刊ヤングジャンプ」には、同じく新都社で作品を発表していたそとなみさんが“石田スイ”名義で連載している作品『東京喰種―トーキョーグール―』(2011年~)も掲載されるなど、WEB漫画発の作家が同じ雑誌に顔を並べた。
WEB漫画の商業化と可能性
WEB漫画を発表していた作家の商業誌デビューや作品の商業化は、これまでにも例がある。代表的な例は、高津カリノさんが自身のWEBサイトで公開している4コマ漫画『WORKING!!』。同作品は04年に「ヤングガンガン」(スクウェア・エニックス)で商業作品として連載が始まり、10年にはアニメ化を果たしている。同じくスクウェア・エニックス刊の「月刊ガンガンウイング」では、パーダさんのWEB漫画『魔道』が07年から09年まで『磨道』(作画:五十嵐洋平)としてリメイク連載された。パーダさんのWEB漫画は、ほかにも『十字道』がアルファポリスから書籍化されている。
書籍化のケースを紹介すると、日丸屋秀和さんのWEB漫画『Axis powers ヘタリア』が08年に幻冬舎コミックスによって単行本化され、11年に発売された同4巻の発売時点でシリーズ累計170万部を突破。TVアニメ、劇場版アニメも制作されるなど、人気を博している。ほかには、クール教信者さんのWEB漫画『旦那が何を言っているかわからない件』が昨年末に一迅社から単行本化されたばかり。
通常、漫画家としてデビューするには出版社に作品を持ち込むほかに、出版社が主催している漫画新人賞を受賞するなどのプロセスが必要だが、個人サイトで発表しているWEB漫画が編集者の目に留まることでプロ作家への道を切り開くケースが少ないながらに生まれている。また、個人サイトでの公開という点においては、商業誌では表現しづらい内容も公開できるなど、創作に関する自由度が高いのもWEB漫画が持つ側面の一つ。
コミック界の新しい潮流をつくりつつある「WEB漫画」。今後の更新では、『ワンパンマン』作者のONEさん、商業誌での作品連載に向けて準備を進めている『オーシャンまなぶ』作者の拓須たくすさん、過去に『WORKING!!』の担当を務めた編集者のインタビューなどを通し、WEB漫画の可能性や、その魅力について触れていく。