30歳になる、わたしたちへ。(安藤裕子 2/3)

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1.三十歳を超えた途端に、楽になった

2.“理想の自分”を押し付けられすぎかなって

3.「本当に楽しいね」って言える毎日を


<プロフィール>
安藤裕子(あんどう・ゆうこ)
1977年生まれ。シンガーソングライター。
2003年にミニアルバム『サリー』でデビュー。05年、月桂冠のテレビCMに起用された「のうぜんかつら(リプライズ)」が話題に。ソングライティング能力だけでなく、CDジャケットやコンサートグッズのデザイン、ミュージックビデオの監督など、そのアートワークも注目を集める。4月下旬発売のビューティ&カルチャー誌『CYAN』の表紙モデルに抜擢されているほかにも、今秋公開予定で、大泉洋さん、染谷将太さんらが出演する映画『ぶどうのなみだ』にヒロイン役として出演するなど、幅広く活動している。

http://ando-yuko.com


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――安藤さんご自身が30歳前後で感じていた不安や悩みがあれば教えてください。

どうだろう。どうだろうなあ。覚えてないけど、なんかつらかったような気がします。


――ちょうど4枚目のフルアルバム『chronicle.(クロニクル)』(2008年)を出された頃ですが。

やっぱね、いろんな焦燥感はありましたよ。私、散々「30歳は何も考えずに、がむしゃらに働け!」って言いましたけど(笑)、自分は自分ですごい不安だったと思います。……なんだろ。その頃、音楽を何年かやってきた中で、自分たちがやってることはすごく楽しくて自信はあったけど、そうそう結果につながってる感じでもなかったし。大丈夫かなー、とはもちろん思ってた。

一人の人間として、女として生きていく中でも、あたしは結構小さい頃に家族が壊れたから家庭に憧れてた。そういうところで、「子どもを生んでお母さんになる」っていう夢があったから、こういう生活のスタイルでいつ叶えられるんだろうっていう不安もあったし。うん、そういう考えはすごいあったと思う。


――そういった不安は、どうやって解消していったんでしょう。

解消はしなかったですよ。そのまま続いたし。で、数年前に一回、体を壊しましたね。「あ、こりゃもう動かん」と思って。音楽も、これは一回やめないとダメかなとも思った。それで、結構休ませてもらった年がありました。


――そうだったんですね。

でもほら、リリースって結局1年に1枚とかだから、その間の動きって表立っては見えないじゃないですか。まあ、でも、そうやってプライベートの時間を持つ中で子どもを授かることもできたし。そういう意味では、一回どん底まで――体が動かないところまでいってリスタートしたところはありますね。


――焦燥感や体の不調の根本にあったものって、なんだったんでしょうか。

隙間がなかったというか、息継ぎが出来なかったのかな。どの仕事もそうだと思うんですけど、“いつまでに、何々をしないといけない”というのがありますよね。それは私も同じで。それで、日々、24時間、“安藤裕子”って人と対峙してなきゃいけなかった。

活動初期の頃の詞曲は、もうちょっと遊び心もあって、いい意味で適当につくっていたものが、だんだんだんだん、自分との語り合いのような……私小説みたいな部分がすごく強くなってしまって。それで勝手に疲弊(ひへい)していたところもありますね。

だから、最近の自分たちの目標は、向き合ってばかりじゃなくて、遊びの曲をつくろうねって。明日もプリプロ(※編注:レコーディング前に曲のアレンジやテンポの確認をする作業など)なんですけど、最近はそういうのをテーマにやってます。


――30歳というと、同世代と比べていろんな意味で環境の変化が出てくるタイミングだと思うんです。そういう部分でも、自分は周りと比べてちゃんと歩けているのかなと思ってしまったり。

私、20歳超えた時プー太郎でしたからね。風来坊でしたからね。それこそ、エイベックスでやりましょうってなったのが25の時で。だから、周りはみんな社会人なのに、私はバイト。その時もやっぱり体壊しましたよ。不安で。

不安が結構すぐ体にきちゃうんです。自律神経を壊してパニック症候群みたいになって、外に出れない・電車に乗れない。そんな感じでした。自分自身、驚きましたよ。まさか自分の体が、こういう風にもろく、動かなくなるなんて。それより若い頃は、そんな風になるなんて思わなかったし。不安なだけでこんなにこわいなんてことも、知らなかった。だから、不安で不安で仕方がない人がいて、本当に動かない体になってしまったら、それは逆に不安に思わずに、休むしかないですからね。ゆっくり休んで、と思う。

でもね、「周りと比べて……」っていう話でいえば、自分らしく生きるために生業を見つけて、ご飯を食べていく――それは、どうにかなるんじゃないかって、どこか希望を持ってますよ。自分が思い描いていたような生活じゃないかもしれないけど、一緒に働く人たちとくだらない話をして、笑って。嫌いな人がいない現場ってだけで結構ラッキーだったりすることって、あると思うんです。明るく「おはよう!」って言えるのって、私はすごく幸せなことだと思う。

だから、みんなこう、“理想の仕事”とか“理想の自分”っていうものを押し付けられすぎちゃったのかな、と思うんですよ。昔は日本人っていったら農家か商いやってるかぐらいしかなかったと思うけど、いつの間にか横文字の仕事が出てきたり、“エリート”みたいな言葉も生まれてきた。でも、人が生きるって、そこだけじゃないですからね。全部が全部、そこに当てはめようと思ったら牌(ぱい)が合いませんよ。

自分がね、自分らしく呼吸ができて、ご飯を食べる分のお金が稼げて、屋根のあるお部屋に住んで、たまに好きな洋服が買えたりするなら、それはありがたいことだと思う。


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<リリース>
H1D

『Acoustic Tempo Magic』
2014年3月12日発売
CTCR-14823 / ¥1,890(税込み)

【収録曲】
1.slow tempo magic
2.黒い車 feat. NARGO(東京スカパラダイスオーケストラ)
3.早春物語(原田知世さんカバー曲)
4.隣人に光が差すとき
5.聖者の行進
6.世界をかえるつもりはない

【初回封入特典】
収録曲「黒い車」のミュージックビデオ(フルレングス)を先行視聴できる、安藤裕子さんデザインのフライヤー。AR(拡張現実)機能を使っての革新的な視聴方法です。

※期間限定視聴:2014年3月11日正午~4月11日正午。スマートフォン・タブレットPCのみ視聴可


<ライブ>
「安藤裕子 2014 ACOUSTIC LIVE」
5/6(火・祝) 神奈川 鎌倉芸術館 大ホール
5/16(金) 香川 高松市玉藻公園被雲閣大書院
5/17(土) 広島 尾道市民センターむかいしま文化ホール こころ
5/24(土) 大阪 サンケイホールブリーゼ
6/1(日) 仙台 宮城野区文化センター コンサートホール
6/7(土) 沖縄 桜坂劇場 ホールA
6/15(日) 名古屋 しらかわホール
6/21(土) 東京 めぐろパーシモンホール 大ホール
6/28(土) 福岡 IMSホール


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