編集者・石川裕二の超個人的サイト

FEATURE —特集—

【ライブレポート】デビュー30周年を迎えたCASCADEのドラマー・HIROSHI生誕祭に見た、バンドの現在地点

CASCADE のドラマー・HIROSHIの「生誕祭」を冠したライブが、2025年9月13日・14日に大塚Hearts Nextで開かれた。デビュー30周年を迎え、9月24日にはビクターからニューアルバム『ネブラマクラ』のリリースを控えている同バンド。10月3日からは渋谷近未来会館でのライブを皮切りに、2ヶ月間に渡る全国ツアーも開催するなど、2009年に再結成して以来、精力的に活動している。全国ツアーの前哨戦とも言えるライブとなった今回の14日のライブを、中学生の頃からカスケーダーの筆者がレポートする。

取材・文=石川裕二

29曲を演奏した怒涛のライブ

開場から30分が経つと、フロアはHIROSHIの誕生日を祝おうと訪れた客で満員になっていた。ほどなくして、SE「夢の華散るまでに」が流れると共に、ステージの白い幕が上がる。ドラムのHIROSHI、ギターのMASASHI、サポートベースのリウ(=メトロノーム)が、満員の拍手によってステージに迎えられた。1曲目「第三機械時代」の演奏が始まり、一足遅れてヴォーカルのTAMAがステージに現れると、割れんばかりの歓声が沸き起こる。

TAMA「いぇ〜〜あ」

クセのあるTAMAの煽りに観客も呼応する。「第三機械時代」は、デビュー20周年の際にリリースしたアルバム『XX』に収録されている曲だ。現代社会に対する批評性を感じる歌詞だが、曲自体はノリがいい。深く読み込もうとすれば突き詰められる歌詞の奥深さを持ちつつも、音楽性は裾野が広い。それがCASCADEの魅力の一つだろう。

2曲目は「I WANNA KISS TONIGHT」。デビュー2作目の「beautiful human life」に収録されているキラーチューンだ。採掘場のようなところで演奏するPVがすぐに脳裏に浮かんだ。観客も一緒に歌える曲になっており、MASASHIが耳に手を当てて笑顔を浮かべていたのが印象的だった。

TAMAの「飛ばしていくで〜〜!」の掛け声と同時に始まったのは「NEW WORLD」。今宵の主役、HIROSHIが作詞した曲だ。「限界超えた先に進めるのは 果てしない力を信じるヤツだけさ 今目指すのさ It’s a New World!!」という歌詞が40歳を迎え、自分の人生に見切りをつけ始めていた筆者の心に沁みる。

曲終わりで、TAMAの本日最初のMC。TAMAが「HIROSHIくん、ハッピーバースデー!」と祝福すると、観客も一斉に「HIROSHIくん、ハッピーバースデー!!」と声を投げ掛け、笑顔のHIROSHI。幸せなムードがライブハウスを包み込む。

「じゃあ、次もHIROSHIくんの曲行こうかな」というTAMAのひと声で、「ズケズケマン」がスタート。TAMAが作詞、HIROSHIが作曲した楽曲だ。直前のMCでの「縦のラインの頼れるパートナー」というTAMAのHIROSHI評を聞いた後ということや、「世界は広し世帯も広し」と「ひろし」を連呼するTAMAの姿に、曲調とは裏腹に涙腺を刺激されてしまった。

観客のみならずメンバーも飛び跳ねていたのは、5曲目の「恋愛前線完全勝利」。アルバム『Adrenalin No.5』の収録曲で、リアルタイムで聴いていた身としては、この曲をライブで聴けたことが感慨深かった。TAMAが観客にマイクを向けると、観客も歌詞を合唱。

次はTAMAの「力強くいくでぇーーー!」の掛け声で、「Distortion Pinky ~ぶっ飛ビートver.~」がスタート。CASCADEはいろいろな音楽性を見せてくれるが、同曲に見られるようなアバンギャルドな一面が好きだという人も少なくないだろう。コーラスの「ハイ、ハイ、ハイ!」の部分ではMASASHIと観客の声が一つになる。デビュー間もない頃から演奏されている楽曲とあり、この一体感にバンドの歴史を感じた。

MCを挟み、「TOKYOダーリン」「コドモZ」「アントニオーニノヒゲキ」と続く。「アントニオーニノヒゲキ」は数年ぶりの演奏とあり、イントロが流れた瞬間に観客からは拍手が巻き起こっていた。

この楽曲には「あっ、コーヒー」という歌詞をメンバーが続々とコーラスするパートがあるのだが、直後のMCでMASASHIがリウに「(同部分の)コーラスありがとう」と言うと、リウがネイティブさながらの発音で「a coffeeですよね」。このやりとりに観客は爆笑。MASASHIがHIROSHIにも「英語風に言うとどんな感じなの?」と聞くと、「僕はちょっとイタリア風なんだよね。コォーフィー」と言い、観客の笑いを誘った。

レア曲を組み込んだセットリストに熱狂

一旦TAMAがステージからはけ、MASASHIボーカルの「アイファクトロニー」が始まる。直前のMCでワインの話をしていたことが影響していたのか、2コーラス目の歌詞に出てくる「ロマネ」を1コーラス目で歌ってしまい、仕切り直し。間奏時にMASASHIとリウが向かい合ってギターとベースをかき鳴らした際には、観客から黄色い声が上がった。

微笑ましいアクシデントのあとは「ネジBRUCE」のセッションを経て、TAMAがステージに帰還。「ミ・ツ・バ・チ」「メギド」「ダストロイ」とハードな曲が続く。その後の「ヒカリトカゲ」では、美しいメロディーラインで観客を魅了した。

MCでは、TAMAがHIROSHIに「思い出深いバースデーはある?」と質問。HIROSHIは、5年ほど前に自身のバースデーライブを行った渋谷チェルシーホテルでのファンからの寄せ書きだ、と話した。「元気がない時はそれを見て、頑張ろうとなりますよ」とHIROSHIが感慨深げに語る。

MC後のナンバーは、なんと「カナリアROMANTIX」。長らく演奏されてこなかった楽曲で、TAMAがタイトルコールをすると観客からは「やったーーー!」とストレートな喜びの声が。続く「かくされたメッセージ」のイントロでも観客から歓声が上がるなど、レア曲が多いセットリストになっていることが感じられる。再結成後を代表する楽曲の一つ「パーティフルサルマンライフ」では観客の踊り狂う姿を見て、メンバーから思わず笑みが。

TAMAが「踊りまくってやーーー!」と楽しさを抑えられない様子で言った「我武者羅WARS」、CASCADEのキャリアを代表する楽曲「Flowers of Romance」など、ダンサブルな楽曲が続く。同曲ではMASASHIのオリエンタルなギターソロが、HIROSHIの力強いドラムが鳴り響いた。HIROSHIのドラムは音源の時よりもかなり手数が多くなっているように感じたが、その答え合わせは終演後のインタビューで答え合わせをすることができた。

初期曲の強度が物語るCASCADEの音楽性

ここまで20曲を演奏してきたCASCADE。「Kill Me Stop」「いるかな」「VIVA NICE TASTE」「しゃかりきマセラー」とキャリアの初期を代表する曲を立て続けに演奏した。「VIVA NICE TASTE」はベースからイントロが始まるとあり、リウのプレイに歓声が上がる。

これらの4曲を聴いて感じたのは、特徴的な高音はもちろん、がなったり、シャウトしたりと、TAMAの細い身体のどこから変幻自在な歌声が生まれるのだろう、ということ。ステージに立つ前の同氏はとても穏やかだったので、余計に不思議に思ってしまった。

「しゃかりきマセラー」でのMASASHIの空間を切り裂くような鋭いギターもとにかくかっこよかった。

そして、さらさらだったHIROSHIの髪が束感を帯びていることに気づく。汗だ。それほど激しいドラムプレイをしているのだと、瞬時に悟る。正確なリズムを力強く刻むHIROSHIの姿に見惚れていると、TAMAが「ラスト2曲やでーーー!」と咆哮。「debug」「死んだビーチ」が演奏された。「今日も1日楽しかったでい!」というTAMAの一言に、この夜が凝縮されているように感じた。

ここで本編は終了。アンコールの掛け声の代わりに「ハッピーバースデー、HIROSHIくーん」の合唱が起きるなど、多幸感あふれる時間となっていた。

しばらくしてHIROSHIが登場すると、「本当はさっきの2曲がアンコールだったんだけど、TAMAちゃんがノッちゃって、もうアンコールやっちゃったんだよね!」とポツリ。「えーーーー!?」と残念がる観客をなだめるように、HIROSHIが「でも、その代わりに、今度僕たちアルバム出るでしょ? そのMVを今から撮ります!」と言うと、今日一番の歓声が。登場したプロデューサーから「(ライブ風景を撮影した)『なりきりボニー&クライド』方式です」と説明されると観客からは割れんばかりの拍手が。

9月24日に発売されるニューアルバム「ネブラマクラ」に収録される「ヘッチャラッチャ・クラッシュ」のMV撮影後は、「マスクマン」と、この日2回目の「VIVA NICE TASTE」で、ダブルアンコールが終了。29曲、ほぼぶっ続けとなる怒涛の演奏を経て、終演となった。

「今のCASCADEが一番かっこいい」

――2日間、たくさんの方にお祝いしていただいて、今の気持ちはいかがですか?

HIROSHI:毎年のようにお祝いしてもらって、本当にありがたいです。

――昨日はプライベートで来たのですが、セットリストが2日間でこんなに違うのかと驚きました。セットリストはどなたが考えたのでしょうか。

HIROSHI:MASASHIくんです。

MASASHI:HIROSHIくんの曲を満遍なく入れて、セットリストを組み立てることを考えました。HIROSHIくんの曲全てを入れることはできなかったんですけど、HIROSHIくんがやりたかった曲も多く入れています。

――生誕祭って、メンバーの仲が良くないと企画しないと思うんです。30年バンドを続けてきて、もちろん休止期間もありましたけど、今、改めてこのメンバーでやれてよかったという気持ちってあるんでしょうか。

MASASHI:それはライブをする度に思います。TAMAちゃんのボーカルがあって、HIROSHIくんのドラムがあって、確固たるサウンドの軸ができ上がっているので。ライブをすると、いつもそう思います。

――セットリストには初期の曲も多く組み込まれていました。CASCADEの楽曲は色褪せないなと改めて感じたのですが、ご本人としてはどう感じていますか?

MASASHI:技術力は今でもあるのかわからないですけど、「こういうのがやりたい」っていう気持ちが強くあって、それをバンドで鳴らして。ちょっと背伸びしたというか、当時の自分たちからしたら小難しい曲もあったんですけど、今ならできるかなと思いながら演奏しています。

HIROSHI:やっぱり、30年やってきましたから。演奏も上手くなっていますよね。今が一番、CASCADEかっこいいんじゃないかな。

――うおぉ、いいですね! HIROSHIさんのドラムの手数も増えているように感じましたが。

HIROSHI:うん、増えています。各々の成長は、ライブで見てほしいところですね。

――かっこいいなぁ〜〜! じゃあ、最後にTAMAさん!! カスケーダーのみなさんにメッセージをお願いします。

TAMA:そうやなぁ〜、まずは9/24に発売される『ネブラマクラ』を聴いてね! そして、全国ツアーにも遊びに来てね〜〜!!



<セットリスト>
01. 第三機械時代
02. I WANNA KISS TONIGHT
03. NEW WORLD
04.ズケズケマン
05. 恋愛前線完全勝利
06. Distortion Pinky ~ぶっ飛ビートver.~
07. TOKYOダーリン
08. コドモZ
09. アントニオーニノヒゲキ
10. アイファクトロニー
11. ネジBRUCE
12. ミ・ツ・バ・チ
13. メギド
14. ダストロイ
15. ヒカリトカゲ
16. カナリアROMANTIX
17. かくされたメッセージ
18. パーティフルサルマンライフ
19. 我武者羅WARS
20.Flowers of Romance
21.Kill Me Stop
22.いるかな
23.VIVA NICE TASTE
24.しゃかりきマセラー
25.debug
26.死んだビーチ
27.ヘッチャラッチャ・クラッシュ
28.マスクマン
29.VIVA NICE TASTE



■アルバム『ネブラマクラ』の詳細は下記リンクから!

https://www.cascade-web.net/news/9047a98d-bd24-4e1f-b032-4b97bd8c862c

■CASCADEのライブ情報は下記リンクから!

https://www.cascade-web.net/live

【特報】後日、メンバーへのロングインタビューの実施が決定! 11月公開予定!!

RANKING —人気の記事—

DAILY
WEEKLY
MONTHLY
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5

CATEGORY

RELATED

PAGE TOP