編集者・石川裕二の超個人的サイト

EDITOR'S-ROOM

インタビューについて、いま思うこと。

映画『黒執事』のDVD・ブルーレイの発売(6月4日)に際して、オフィシャルインタビューを制作させていただきました。SHUTTER magazineの巻頭インタビューでの取材がきっかけとなり、この仕事をいただけて、本当に光栄です。編集者・ライターとして生きていく上での自信となる出来事の一つですし、純粋に、同じ夢を見る一員に加えていただけたことを、心からうれしく思います。

また、自分の仕事の仕方は決して間違っていなかったんだ、とも思えました。というのも、私がまだ駆け出しの編集記者だった頃、上司に言われた言葉がずっと胸に残っていたんです。

「人が(実際に)言った言葉だけで記事をつくるのは相当大変だよ。でも、それができるんなら、とてもすごいことだけど」

上司からの「こういう表現にしたほうが読者に伝わりやすいんじゃない?」というアドバイスを受けて、「でも、その表現はちがう」的な反論をしたんだと思います。僕はなるべく、取材させていただいた人が使った言葉を使うようにしていました。それは、今も変わりません。

もちろん、インタビュイー(取材を受ける人)だって完璧ではありませんから、思ったことすべてを的確に(しかも、とっさに)言葉で表現できるわけではありません。だから、そう感じた場合は、その言葉の真意を汲み取るように努めて、限られた文字数の中で、より読者に伝わりやすいであろう言葉に変えさせていただいてます。その上で、僕は本人校正(確認)を出しています。記事全体の意図や、表現を変えた理由も添えて。

たった一時間弱話を聞いただけで、その人の考えを理解した気になるなんて、おこがましいにも程があると思っています。もちろん、理解するための下調べは取材前に念入りにするんですけど。それでも、確実に限界があります。少なくとも、僕にはその能力はありません。

テレビ番組などを観ていて、著名人の方が「言ってもないことを書かれる」と発言しているのを耳にしたことがありますが、都合のいいように話を編集して、言葉を変えてしまう同業者もいるんです。それが善意によるものでも、悪意を持っての行為だとしても、インタビュイーからしたら同じですよね。言葉を預かり、人に伝えていくのがインタビュー記事の役割(の一つ)ですから、発言の真意を誤った形で伝えてしまうのは避けなければなりません。

「なりません」なんて偉そうに言いましたが、僕も大失敗をしたことがあります。上記のような自分のやり方に対して「このままでいいのだろうか」という漠然とした不安に駆られ、本人の言葉の表現をかなり変えてしまったのです。その記事は、本人校正でとてつもなく赤字(修正)が入りました。失礼なことをしたと、いまでも申し訳なく思います。

でも、そのことがあったから、逆に「いままで通りでいいんだ」と思えました。それが、今回の仕事で確信……というには大げさですが、そう信じる裏打ちになりました。

勉強はできない。運動もできない(短距離だけちょっと早い)。音痴だし、楽器も弾けない。絵も描けない。そんな、何の特技も、取り柄もない僕が唯一、人から評価してもらえたのが、学生時代に書いたゼミのレポートでした。

「書くのって、楽しい!」。そう思って、同じゼミの友人が所属していた演劇部に入って脚本を書かせてもらい、大人数で一つのものをつくる楽しさを知り、大学卒業後は出版業界に入りました。僕には、この仕事しかできないので、今回のように才能ある方から評価してもらえることは、本当にありがたいです。うれしいです。何かの、だれかの役に立てるなら、こんなに幸せなことはありません。

取り留めのない文章で、すみません。今回の仕事の連絡をいただいた時のきらきらした感情と、いまの自分の考えを、記録として、残しておきたいと思いました。ただ、この考えは、少しずつ変わっていくはずです——僕にもっと力が付いて、インタビュイーとの間に強い信頼関係ができれば。その時、この記事を読み返して、自分の力を過信しないようにしたいと思っています。

2014.05.26

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