『PHOTOGRAPHERS SUMMIT』と青写真

17日、渋谷O-EASTで開かれた写真イベント『PHOTOGRAPHERS SUMMIT(フォトグラファーズ サミット)』に行ってきました。

「写真をより身近に感じ、アートとして昇華していくための実験的、野心的なプロジェクト」(公式HPより)として、2008年から開かれている同イベント。主宰の山田敦士さんを始めとする写真家たちによるもので、大型スクリーンを使っての作家自身によるスライドショーのほかに、来場者によるポートフォリオの持ち込みコーナーなどが設けられています。なお、ポートフォリオコーナーでは、「優れた作品に対して、何らかの出口をつくりたい」という意図から、選出された1人が7月に開催予定の写真展への参加権利を得られる特典がありました。

8回目の開催となった今回のテーマは、「PHOTOGRAPHY is Communication(写真はコミュニケーション)」。人と人をつなぐコミュニケーションツールとしての写真の魅力を伝えようというものでした。

スライドショーを用いたプレゼンテーションには、「日本写真協会賞 新人賞」(11年)を受賞した大和田良さんのほかに、写真集『SCHOOLGIRL COMPLEX』が注目を集めている青山裕企さんなど新進気鋭の写真家を中心とする8人が参加。1人あたり5分という持ち時間の中で、作品のテーマや制作意図などを来場者に向けて話しました。私が特に印象に残っているのは、同じくプレゼンテーションに参加した写真家の鈴木心さんのコメントです。

「昨今のカメラブームもあり、多くの人がカメラを所有して写真を撮っているという状況にも関わらず、(写真家の)作品が届いていないという印象がある。写真が好きな人、興味を持った人に対して、もっと写真家自身が動いていかないといけないのではと思い、『PHOTOGRAPHERS SUMMIT』に参加させていただきました」

恐らく、これは同イベントを開催する主旨でもあると思います。“写真を撮る”だけではなく、作品としての“写真を見る・楽しむ”ということを体験してもらおうということ。

「好きな音楽を聞くのと同じように、好きな写真を見る」「絵を飾るのと同じ感覚で写真を飾る」。同じアートやエンターテインメントという土俵の中で、“作品としての写真”はまだまだ浸透していないのだと思います。

そういう環境下において、渋谷O-EASTという約1300人を収容できるライブハウスでイベントを開くことがどれだけ大変で、どれだけすごいことか。ちなみに、08年5月に開かれた最初の同イベントの来場者は110人とのこと。現在では写真業界に携わる10企業以上の協賛を受けているほかに、同イベントから派生した雑誌『SHUTTER magazine』(サンクチュアリ出版)なども発行されています。

最初は写真家同士が集まって作品集を見せ合っていたイベントが大きな渦となり、一般の人や企業を徐々に巻き込んでいる。同イベントのキャッチコピーに「写真界の新たなムーブメント」とありますが、本当にその通りだと思います。たったの3年間で、これだけ大きなイベントに成長しているのですから。

私は08年当時、主宰の山田さんとお仕事をご一緒させていただいていたこともあり、同イベントには何度か足を運んでいました。その当時は山田さん自身もプレゼンテーションを行なっていましたが、現在では完全に裏方に回っているよう。写真家として、『PHOTOGRAPHERS SUMMIT』の主宰として、山田さん自身が新しいステージに進んだということでしょう。今回、イベントの最後には山田さんがステージに上がって挨拶をしていたけど、満員のホールをどんな気持ちで見ていたんだろう、と思います。

アートとして、また、エンターテインメントとしての写真が、近い将来、山田さんたちの手によって、私たちの元に広く届くことになるでしょう。文化水準が上がっていくことで、写真家はより多くの作品をつくることができるようになり、素晴らしい作品が生まれれば私たちもより楽しむことができる。そして、写真家は再び新しい作品をつくる……という、スパイラルが生まれるはずです。これは、先日紹介したファッションイベント『roomsLINK』ディレクターの松井智則さんも、ジャンルこそ違えど同様のことを言っていましたね。

便乗するようでおこがましいかもしれませんが、『東京黎明ノート』も同じ主旨で立ち上げたメディアです。今はまだ発展途上の段階ですが、上記に挙げた2イベントのように、今の日本に必要なものだと信じて制作を続けています。5年後、10年後に、2イベントとスクラムを組めるようなメディアに成長して、豊かな日本を築いていく一角を担っていきたいと思っています。

ファッション、音楽、演劇、写真、絵画、彫刻、小説、漫画、アニメ、ゲームetc.
「東京黎明ノート」では、“アート”や“エンターテインメント”に携わる人を紹介することで、それらと“社会”のつながり、可能性を示していきます。取り上げていく人やモノは、まだ雑誌や新聞などで発言をしたり紹介される充分な機会がない人たちです。その境界線に位置する“中堅”的な人を紹介することもあれば、まだまだ有名とは言えない“若手”の人を取り上げることも多くなるでしょう。

「東京黎明ノート」はそれでいいと思っています。いくらでも発言する機会のある人を取り上げるのは、大手メディアに任せればいい。他のメディアが紹介しきれない部分を取り上げてこそ、情報を発信する媒体を立ち上げた意義があると思っています。「東京黎明ノート」が今より多くの読者の目に触れ、紹介した人物が一様に注目されるようなものになれば、メディアとしての役目の一つを果たせるというものです。

そして、それが出来たときに初めて、僕が編集者である必要性が確立されると思っています。媒体を立ち上げたと言っても、まだまだ無名の編集者。他の業界に転職したところで、だれも困りはしません。

でも、上のような青写真を描いている以上は、そうするわけにはいかないのです。なぜなら、取材対象の選別を含めた場合、それらの“核”を伝えるという点において、「東京黎明ノート」と同じことが出来ているメディアは現時点で存在しないからです。“取材して読者に伝える能力”がある以上、私はそれを生業とするべきだと思っています。

なんて、熱くなってしまいましたね。でも、『roomsLINK』や『PHOTOGRAPHERS SUMMIT』には、そういうパワーがあったということです。同じ志の仲間がいるようで勇気づけられたような気さえしました(ご本人たちには迷惑かもしれませんが)。

というわけで、今後とも「東京黎明ノート」をよろしくお願いします。いつも見にきてくれている読者の人、制作をサポートしてくれている仲間、取材に協力してくれる人たち、本当にありがとうございます。

                      「東京黎明ノート」編集者
                              石川裕二