「今、イラストレーターがおもしろい」展で販売される、作家のサイン&エディション付きのDFA(デジタルファインアート)版画作品。DFAの特徴は、超高精細デジタル撮影と安定したカラープロファイルによって、ハイクオリティなデジタルデータを作成・印刷できるというものです。『東京黎明ノート』では、「自分の原画とDFA版画を間違える作家もいるほど」といわれる、その技術力の高さをレポートすべく、同展示に参加するRa’yka(ライカ)さんの色校正に同行。DFAのサービスを展開している、東京都の羽陽美術印刷さんにお伺いしてきました。
【羽陽美術印刷】
1961年創立の印刷会社。オフセット印刷を主体に事業を展開。美術印刷に関する事業を展開するのと同時に、「九段下アート・ギャラリー CORSO(コルソ)」を運営している。
http://www.uyo.co.jp
http://www.uyo.co.jp/lithApCorso/
【Ra’yka プロフィール】
東京都出身。京都精華大学芸術学部造形学科洋画分野卒業。ドイツの映像制作会社のアートディレクターを経て2010年から東京を拠点にアーティスト活動を開始。官能的なモチーフと、和紙を用いた鮮やかなコラージュが作風の特徴。国内のほか、NY、LA、ベルリン、トロント等で展覧会に参加。なお、「deep sweet easy x Ra’yka 2012サマーコレクション」が4月中旬から発売する。
http://rayka.jp
http://www.dse19.com/
ハイクオリティなDFA版画を体験
マスク姿のRa’yka(ライカ)さん。
「電車に乗る直前まで描いていた」という、
できたてホヤホヤの新作を持ってご登場です。
そして、それを後ろから眺める一人の男性。
羽陽美術印刷株式会社代表取締役の福田さんです。
Ra’ykaさんは首を曲げ、いろんな角度から作品の仕上がりをチェック。
1階のスタジオに移動。
右側にいらっしゃる男性は、カメラマンの林田さん。
今回の撮影を担当してくださいます。
物腰の柔らかい、素敵な方です。
さっそく、Ra’ykaさんの作品をセットします。
作品の前方にあるのは、DFAには欠かすことのできない
「ベターライト」というスキャニング方式のデジタルカメラ。
RGB(※1)の各色1本ずつをライン状に配列したCCD(※2)を
動かしながら画像を取り込んでいくことで、
筆のタッチなどの細かなニュアンスまでも
記録することができるといいます。
※1→Red(赤)、Blue(青)、Green(緑)の三原色を用いた、色の表現方法。液晶ディスプレイなどの画像再現に使われています
※2→デジタルカメラ・ビデオカメラなどに用いられている半導体素子。画像を電気信号に変えるものです
特殊ライトがピカーっと光ります。
「光がちらつかない特殊なライトを使うことで光のムラをなくし、
より安定したデジタルデータをつくることができるんですよ」と林田さん。
ちなみに、このカメラの画素数(※3)はなんと、195000000!
あ、わかりづらいですよね。1億9500万です。
ちなみに、この記事の撮影をしている一眼レフカメラは
2008年に発売したもので、有効画素数は約1230万。
比べると、そのすごさがわかります。
※3→コンピュータで扱われる画像は、すべて点の集合でてきています。画素数が高いほど、その点が細かいことを表します
絵の周りに、ミラーとカラーチャートが登場。
「鏡は、カメラレンズの中心に絵がくるようにするための目印です。
少しでも斜めにずれていたりすると、仕上がりに影響してしまう。
真正面かつ並行に撮るための工夫ですね。
カラーチャートは、撮影後に色の調整を行なうため」と林田さん。
シビアなセッティングが要求されます。
カメラのディスプレイの上から、
さらにルーペでのぞいてピントを合わせます。
「自分の目だけでは微妙に合わないから」とのこと。
そこまでやってこそ、DFAならではのハイクオリティを
実現できるというわけです。
すかさずRa’ykaさんもルーペでのぞきます。
なんかプロっぽいです。特に右手の位置あたり。
カメラ越しに見ると、こんな感じ。
そろそろ撮影……と、スタジオの扉にこんな張り紙が。
「10分ほどかけてスキャニング撮影するので、
途中で蛍光灯の光が入ったり、揺れたりすると、ぶれてしまうんです。
なので、撮影時には張り紙をして、ゆっくり入ってきてもらっています」
と福田さん。徹底しています。
すべてのチェックが終わったら、撮影スタート。
福田さん、林田さん、よろしくお願いします!!
DFA版画が完成したとの連絡を受け、
色校正(※4)をしに再び羽陽美術印刷さんへ。
上にある2つの画像、どちらが原画で、どちらがDFAによるものでしょう?
見比べて、考えてみてください(画像をクリックで拡大)。
※4→印刷されたものの色味がイメージと異なっていないかを確認する作業
正解は、左側がDFA印刷、右側が原画でした~。
少なくとも、こうして画像で見比べる分には
見分けがつかない方がほとんどだと思います。
この仕上がりには、Ra’ykaさんも「すごい、感動っ!」と驚きの様子。
「自分がどういうことをやっているか分かるからこそ、
なおさらDFAのすごさが実感できる」とRa’ykaさん。
「特にほら、ここです。ここがすごい」と続けます。
「ここ」とは、花のコラージュ部分のこと。
コラージュとキャンバスの境目に影や凹凸感が
出ているのがわかるでしょうか(画像をクリックで拡大)。
Ra’ykaさんといえば、和紙のコラージュが作風の特徴の一つでもあるので、
DFAのこの表現力に、しきりに感動しているのです。
筆づかいやストロークの加減もしっかり再現(画像をクリックで拡大)。
……というわけで、色校正は無事に終了。
この後、通常の流れを紹介すると、
各種加工や修正した上で再度印刷し、
余白のカットやキャンバス張りなどを行ないます。
今回の展示では、各作家が直筆サインと
エディション(各限定3枚)を入れて完成となります。
羽陽美術印刷さん、Ra’ykaさん、取材のご協力ありがとうございました。
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