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素晴らしきかな、ヴィジュアル系

【音源レビュー】庄村聡泰によるWaive『The SUN』解説 BIGMAMAやUNISON SQUARE GARDEN、Official髭男dismやNovelbrightが好き人はどうか聴いて

「素晴らしきかな、ヴィジュアル系」第9回/Waive
ヴィジュアル系バンドへの造詣が深い庄村聡泰(Dr.DOWNER、ex.[Alexandros])が、11月26日にリリースされたWaiveの最後の音源『The SUN』をレビュー! ミュージシャンである彼ならではの、熱のこもった文章をぜひ読んでほしい。

なお、本サイトを運営する石川裕二のXで、あくまで読者プレゼントではなく、本当にあくまで個人的に1/4の解散公演の2F指定席のチケットの当日引換券を無料で配っているので(※恵比寿の即売会で杉本さんから購入/記事公開時点で残り7枚)、リンク先のアカウントをフォローしていただいた上で、気軽にいしかわ(https://x.com/yunini1203)までご連絡を。

サトヤスさんの記事ページではあるが、編集者が出しゃばって一言だけ。取材こそ叶わなかったが、僕の心のなかにWaiveの音楽が流れている証をどうしても残したくて、サトヤスさんにレビューという形で記事の執筆をお願いした。そして、このすばらしい原稿が届いた。感謝の気持ちでいっぱいだ。

文=庄村聡泰
編集=石川裕二

指からすり抜けてゆく、砂のような時間よ

“メロディアスなロックバンド”だなんてありふれにもほどがある形容であるが、その一つの到達点、最高峰、金字塔がここにある。

以上だ。

2026年1月4日に予定されている解散公演“Waive LAST GIG.「燦」”を目前に控える中でLAST EPとして届けられた「The SUN」。収録楽曲は全6曲(とはいえ後述するが実質は5曲)で収録時間は22分。随分とコンパクトにまとめられたバンド最後の音源であるが、その濃度と完成度の高さたるや。

音像こそ田澤孝介(Vo)のこれまたありふれにもほどがある形容であるが素晴らしいボーカルを中心に据え、そちらを立たせる形でバンドサウンドはどちらかと言えば聴きやすいソフト目なミックスに抑えられているも、そのバランスの良さにも言及しておきたい。“メロディアスなロック”を聴かせる上で完璧なサウンドバランスではないか。

冒頭は完全な新曲として、そして本作のリードとして制作された「燦-sun-」からの幕開け。ばしんと決まるキメから杉本善徳(Gt,Vo)が駆るシングルコイルのギターによるギャリギャリとしたプレイ。そちらに重なる貮方孝司(Gt)のコードワークと高井淳(Ba)のライン。ミディアムテンポの進行を思わせる導入部から僅か一拍の間を置いて、アンサンブルは鮮やかに疾走。この瞬間をもう何度巻き戻して聴き返したことだろう。たまらなくカッコ良い展開、たまらなく気持ち良い裏切りである。

エフェクターを駆使した変則的なリフで走り出す鮮烈なイントロでもう既に勝負あり。力強さとラウドさと同時にプレイヤーの体温をも感じさせる音像が聴き手の胸に一撃で火を灯し、それに加えて譜割り、メロディライン、その全てに輝き狂っている田澤の歌が切り込んでくるのだ。もうマジで、本当に、たまらなくカッコ良い。

特筆すべきは歌メロに合わせたのかバンドサウンドに合わせたのか、メロディラインとバンドサウンドが絶妙にグルーヴしていく様であり、同じBPMの中で疾走するイントロからAメロはミディアムに落とし、Bメロは更にその半分に落とし、サビで再び疾走するという手法が取られている点。

更にサビ終盤で再びミディアムに落とし、ラストは歌メロとバンドが完璧に絡み合ったキメを配置するなどロックバンドの気持ち良さが詰まりに詰まっているのだ。メロディアスなロックバンドの到達点で最高峰で金字塔だと形容した由縁がここにある。

続くバラード「BRiNG ME TO LiFE」では強靭なバンドアンサンブルの上にピアノ、ストリングス、コーラスラインなど重厚な要素を備える中、田澤が圧倒的な歌唱で応戦。

ゴールデンコンビと目された田澤のボーカリゼーションと杉本のソングライティングの黄金比をこれでもかと聴かせ、それが次曲「END ROLL (The SUN ver.)」のポップに弾けるメロディラインのメインとハモリとして、つまり歌唱と楽曲という関係性から歌そのものの中でゴールデンコンビが融解するというより有機的で立体的な、温かい形への変化を味わうことができるのだ。

バンドもボーカルも抜群の切れ味を見せる「火花」ではサビで妖艶にうねる高井のベースや楽曲のノリを決定付けている貮方のソリッドなプレイでメンバー4人としての黄金比を聴かせ、ラストは武道館で聴いたらきっと泣いてしまう、言葉も要らない大名曲「Days. (The SUN ver.)」で終幕。

ここからは自身が元[Alexandros]のメンバーとしての経歴がある故その流れで当記事を読んで頂ける、恐らく日常的、或いは積極的にヴィジュアル系との接点を持たなかった方々へ向けての著述であるが、BIGMAMAやUNISON SQUARE GARDENが好きならどうか、どうか一度聴いてみて頂きたいし、バケモノ級に歌が上手いバンド、力強いハイトーンが魅力的なバンドとしてOfficial髭男dismやNovelbrightが好きならどうか、どうか(以下同文)といった次第である。

同世代、もしくは後輩にこんなバンドがいたら、対バンしていたら、フェスでうっかり観ちまったとしたら、ネットでうっかり聴いちまっとしたら、それはそれは心底震え上がる思いか一発でファンになるかの二択だったであろう。

Waiveが先輩で本当に良かったと心から思っている(笑)。

6曲目? ああ、Napalm Deathの「You Suffer」みたいなヤツね。



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