2025年4月14日まで目黒シネマで上映中の映画『V.MARIA』の企画・プロデュースを務める、小澤友美さんにインタビュー! なんと、小澤さんは中学校の頃にナイトメアにハマったのがきっかけで、現在もヴィジュアル系が大好きだという生粋のバンギャ!! つまり、映画『V.MARIA』は、バンギャによるバンギャのためのバンギャ映画だってこと!
60分、たっぷりインタビューさせていただいて、バンギャトークと映画の魅力を話してくれたぞ! バンギャのみなさんが思わず共感してしまうリアリティのある映画は、どのようにつくられたのか!? 必読だぜ!
【プロフィール】
小澤友美(おざわ・ともみ)
テレビ放送番組、映画、舞台、WEBコンテンツなどを手掛ける株式会社メディアミックス・ジャパンのプロデューサー。映画『V.MARIA』のほかにも『BAD HOP 1000万1週間生活』『フリースタイルダンジョン』『このデートはフィクションです』『松岡充のただしイケメンに限る!』など、制作に携わった番組は多数。
まずはバンギャ&ギャ男トークをお楽しみください
――映画『V.MARIA』のプレスリリースには「子どもの頃からヴィジュアル系バンドを追っかけ、現在もバンギャ活動を行う」と書いてありますが、どんなバンドが好きでしたか?
小学校高学年とか中学校の時って、いろいろと新しい音楽を聴きたくなるタイミングじゃないですか。中学生になって、TSUTAYAに自転車で行くようになった時、CDのジャケットを見て手に取ったのがナイトメアのアルバム『Ultimate Circus』だったんです。いざ聴いてみると、めちゃくちゃかっこよくて。
それからしばらくした日のことなんですが、好きだった漫画『DEATH NOTE』がアニメ化されるというニュースを知った時に、「the WORLD」と「アルミナ」が主題歌に起用されると書いてありました。そこに載っていたナイトメアのアー写を見て、初めて「こんな見た目の人たちだったんだ」と思ったのを覚えています。
――え、じゃあ、ナイトメアをヴィジュアル系とは認識していなかったんですか!?
はい。純粋に音楽がかっこいいなと思いました。その後、中学3年生の頃から携帯電話やパソコンを使うようになり、ネットでナイトメアが影響を受けたバンドは何だろうと深掘りしていき、LUNA SEAを知ったり、ヴィジュアル系の世界を調べていく中でDIR EN GREYを聴くようになりました。DIR EN GREYは本当に衝撃的で、最初に聴いたのが「朔-saku-」でした。次に聴いたのが「Cage」で。その2曲が同じバンドの作品とは思えなくて、どうしてこういう作風になったのだろうと調べていって、だんだんとヴィジュアル系や音楽の沼にハマっていきました。
――難しいかもしれませんが、青春の4バンドを選ぶとしたら、どのバンドになるでしょうか。
う〜〜ん……、まずはLUNA SEAとDIR EN GREY、ナイトメア。最後は迷いますね。Plastic TreeとCASCADEでしょうか。
――えっ!! 僕もカスケーダーですよ!
えっ!?
――ちょうど1週間前くらいに、ドラムのHIROSHIさんが週末だけバーテンダーをしているゴールデン街のお店に行ってきました。ご本人がTwitterで書いているので、オフレコではない話です。憧れの人に会えて、めちゃくちゃ感動しました!
えーーー、知りませんでした! 私は、音楽オーディション番組『えびす温泉』(テレビ朝日)のCASCADEの映像を観て、なんてかっこいいんだと思って。私が知った当時はもう解散していたので、音源を必死で探してアー写のTAMAさんの髪型をマネしていたくらい好きです。
――CASCADEがヴィジュアル系かという議論は置いておいて、素晴らしいバンドですよね! 僕は「マジカルジャーニー」という曲がすごく好きで。いや〜〜、野生のカスケーダーさんにお会いできて、うれしいです!!
CASCADEは10数年前に復活ライブに行きましたよ!
――うわっ、いいなぁ! 今年はCASCADE、結成30周年記念でツアーもやりますからね、楽しみですね。ところで、ライブと言えば、初めて行ったライブはどのバンドですか?
STUDIO COASTでのDIR EN GREYです。ライブそのものが初めてだったので、会場の熱気だったり、後方からの物理的な圧にビックリしました。何より、メンバーのみなさんのダイナミックな演奏に感動してしまって、そこからは狂ったようにディルを聴くようになりました。ライブに行くためにバイトばかりしていたので、高校は正直、留年しそうになったくらいです。高校時代はライブが生活の中心になっていました。
――そういう経験は、映画『V.MARIA』の制作にも多分に生きているんだろうなと感じます。
そうですね。会場でバンギャの友だちができたり、当時はmixiでコミュニティがあったので、そこでファンの方と知り合ったりしました。学校以外にバンギャというコミュニティがあったのも、高校そっちのけになる理由だったと思います。
もう少しだけバンギャ&ギャ男トークを……
――よく通ったCDショップがあれば教えてください。
私の地元には、中古を含む個人経営のCDショップがいくつかあって、そこによく通っていました。あとは、closet childとか。
――closet child! 最近、L’luviaがどうしても聴きたくなって、CDを買い直しているんですけど、メルカリにもヤフオクにもAmazonにもなかったCDが、closet childの通販にあって感動しました。ラピスの風が〜運ぶ夢は〜〜♪
(歌ってる……?)
――ところで現在、注目しているバンドはいますか?
今回、『V.MARIA』に出ていただいたAzavana、BugLug、ΛrlequiΩはもちろん大好きです! ほかにも、キズやコドモドラゴンをよく聴いています。あとは、結成自体は最近ではないのですが、90年代のDEAD ENDだったり、00年代のdeadmanだったり……!
――deadman!! deadman、めちゃめちゃかっこいいですよね! 同じく眞呼さんとaieさんが組んでいるkeinもメジャーデビューして激アツですよね……って、インタビュアーが話し過ぎるのは良くない! でも、V系トークめっちゃ楽しい! ほかにも何か聴いていますか!?
keinはまだ聴いたことがないので、聴いてみますね! ほかにはLaputa……。
――Laputa!! 8月に渋公でライブありますよね!
そ、そうなんですね! あとはPIERROTが最近サブスク解禁されたので……。
――PIERROT〜〜〜〜!! この前、有明アリーナ行きましたよ! 2daysとも! ほら、僕のノートパソコンにもステッカーが貼ってある……って、つい、話に割り込んじゃうな。すみません。もう、今日はバンギャさんに取材できると聞いて、ただのギャ男のつもりで来ちゃいましたよ。
あはは(笑)。昔はバンギャ友だちとMDで音源を交換したりしていました。
――ダビング交換ですよね。懐かしいなぁ〜〜。そういう掲示板がありましたもんね。BBS掲示板!
(笑)。
――いかん、いかん。つい、饒舌に……。劇中では、主演の菊池姫奈さん演じるマリアが、遺品整理をしている時に母の「開封厳禁」と書かれた段ボールを開けるシーンがありますが、それに絡めて、小澤さんにも開封厳禁にしたい過去はあったりしますか?
それは……。
――ごくり。
恥ずかし過ぎてごめんなさい! 言えないです、余りにも痛過ぎて!!!!
ここからは映画『V.MARIA』の話を
――わかります。僕にもありますもん、痛過ぎる過去が……。さて、ここからは映画の話をたっぷり聞いていきたいと思います! まず、『V.MARIA』は「M CINEMA」という、小澤さんが所属する株式会社メディアミックス・ジャパンの「20~30 代の若手社員を対象に劇場用映画企画のプロデュースの機会を与えるプロジェクト」なんですよね。このプロジェクトは、どのような経緯で立ち上げられたのでしょうか。
弊社には「形やジャンルに捉われない」という企業理念があり、コンプライアンスとは離れたところで自由なものづくりをしよう、と映画制作をすることになりました。その第一弾が『V.MARIA』です。私はバラエティ番組を制作することが多いのですが、『V.MARIA』の企画が通り、映画のプロデューサーを務めるのは初めてです。
――小澤さんの実績を拝見すると、仰っているようにバラエティ番組やヒップホップ関係の番組が多く感じましたが、どうしてヴィジュアル系の企画を出そうと思ったのでしょうか。
ヴィジュアル系の企画は、何かしらやりたいと思って何度も出していたんです。でも、私の畑がバラエティということもあってか、なかなか通らなくて。そんな時に、映画制作のプロジェクトが発足したので、いけるんじゃないかと。映画って、なんていうか劇場に足を運ぶという点でライブに近いと感じたので、うまくハマると思ったんです。周りも、ヴィジュアル系の未知数の可能性を感じてくれて、おもしろいと思ったのか採用してもらえました。
徹底したのは“リアリティ”
――映画の冒頭では、Azavanaのライブシーンがありますね。スクリーン上に乱れ飛ぶヘドバンにはとても臨場感がありましたが、もしかして観客役は本物のバンギャさんたちですか?
そうなんです、本物のバンギャさんたちにお願いしました。SNSで募集をして、主にはAzavanaのファンの方たちが参加してくださいました。映画の特性上、ヴィジュアル系のファンのみなさんにリアリティがないと思われたら、作品の世界観に入っていけないだろうと思ったので、バンギャのみなさんにはとても助けられました。
――リアリティという言葉に合点がいきました。トイレでライブ用の服に着替えたり、「ライブの間だけはちゃんと生きてるって感じる」「このバンド、私しか知らないんだぞ」など、劇中のセリフやシーンに何度もうんうん、と思ったんですよね。これらは小澤さんの思いも込められているのでしょうか。
台本をつくるにあたっては脚本の池亀三太さんはもちろんのこと、監督の宮崎大祐さんと何度も打ち合わせして、みんなで物語をつくり上げました。実は宮崎監督が90年代のヴィジュアル系を好きでライブにも通っていたんです。私は00年代以降のファンで、作中に出てくる過去のシーンの90年代については実感がなかったので、そこは宮崎監督が実体験を言葉として落とし込んでくださいました。
――そうなんですね、監督はギャ男仲間だ! 先ほど申し上げた共感できる言葉はもちろん、河原でヘドバンの練習をしたり、大きな声を出しても目立たない場所でデスボの練習をしたり、ヴィジュアル系・音楽・ライブ文化への愛、そして、何よりもそこに付随するユーモアがなければ、この作品って成立しなかっただろうなと思っていて。とてもいい映画でした。バンドマンや母娘の物語としても、とても良かったです。たくさんの愛を感じました。
ありがとうございます、そう仰ってもらえてうれしいです。
主演・菊池姫奈さんは「真っ白な女優」
――主演の菊池さんの透明感も素晴らしくて。彼女はオーディションだったのでしょうか、それともオファーですか?
以前、彼女が高校生の時に仕事をご一緒させていただいたことがあって。彼女の何にも染まっていない真っ白さが印象的で、主役のマリアのイメージにピッタリでした。なので、オファーさせていただいたんです。あとは、何事にも好奇心旺盛で、いろいろな音楽を深掘りしていく姿勢にバンギャの好奇心にも似たものを感じたんです! バンギャのポテンシャルというか。
私はバラエティ出身なので演技のことを語っていいのかはわかりませんが、素朴な高校生の役だけど存在感があって、心の機微を見事に演じてくださったと思っています。
――寄りのシーンの小さな表情の演技だったり、引きのシーンでもどんな演技をしているかわかるので、すてきな役者さんだなと思っていました。小澤さんの言葉を聞いて、納得です。菊池さんは、ヴィジュアル系やバンギャ文化についてはご存じでしたか?
ヴィジュアル系自体、知らなかったそうです。テレビでも見たことがない、と。なので、劇中で名前の出てくるLUNA SEAやX JAPANの音源を聴いてもらったり、一緒にヴィジュアル系バンドの対バンイベントにも行きました。
――ライブもですか! 貴重なお話だなぁ〜〜!! 劇中では、バンギャ友だちからヘドバンのやり方を教えてもらうシーンがありましたが、「8の字を描くみたいに」というやけにリアルなセリフがあって、思わず笑ってしまいました。あれは小澤さんの仕業ですか?
あのシーンは、はい。現場で私が(笑)。今のバンギャのヘドバンって、8の字ヘドバンが多いように思うんです。作中では、過去だけではなく、今のヴィジュアル系文化の要素を取り入れることで未来の発展につながればうれしいという思いがあったので、記録の意味合いでも8の字ヘドバンにしよう、と監督と話したんです。
――あのシーンに、そんな思いまで込められていたとは……! でも、その話をお聞きすると、メンバーの方が出演しているAzavana、BugLug、ΛrlequiΩにオファーを出した気持ちがわかったような気がします。
冒頭の大事なシーンをお願いしたAzavanaは、出演依頼をした時はまだ結成1年未満のバンドでした。それでも、令和のヴィジュアル系シーンを象徴する勢いのあるバンドだと思っているので、企画の趣旨にも通ずると思ってご出演いただきました。
聖地・目黒鹿鳴館への思い
――大事なシーンではライブハウス「目黒鹿鳴館」が登場しますね。どのような思いでのオファーだったのでしょうか。
もともと、現在の鹿鳴館が閉館して移転することを知っており、何か番組をつくれないかと企画書を書いていたんです。その時は実現には至らなかったのですが、この映画をつくることが決まった時に、鹿鳴館で撮影できないかと真っ先に問い合わせて。すると、奇跡的に! 1日だけ抑えることができて!!
――移転前の鹿鳴館を記録する作品としても素晴らしいな、と思ったんです。4月4日(金)、6日(日)、11日(金)、13日(日)の上映では『V.MARIA』の特別映像として、同社長のPepeさん、X JAPANのPATAさん、LUNA SEAのSUGIZOさん、東海林のり子さんらが目黒鹿鳴館について証言する貴重な映像が観られますね。この作品を映画の特別映像にした理由を教えてください。
目黒鹿鳴館は、バンギャのみなさんはもちろん、ヴィジュアル系ファンのみなさんに広く愛される思い出の場所です。移転することについて惜しむ気持ちはありますが、また新天地でヴィジュアル系シーンの発展を担うという意味では、これもまた未来の象徴だと感じました。ヴィジュアル系と縁深いこの場所のことを、作品とセットで届けたいと思ったんです。TOKYO YANKEESのメンバーにもご出演いただいているんですよ。
劇伴・SUGIZO氏の快諾は「今でも夢みたい」
――最後に『V.MARIA』の目玉の一つでもある、劇伴を務めたSUGIZOさんのことについて、聞かせてください! まず、オファーを受けていただいた時のお気持ちは、いかがでしたか?
こんなことがあるんだ、と。夢みたいな話というか、鹿鳴館のこともそうですが、夢見ていたことが奇跡的に重なって、どんどん実現していくのが怖くなって。「私、明日、死ぬんじゃないか」と思いました。
――わはは! でも、どうしてSUGIZOさんにお願いしようと思ったのですか?
宮崎監督と共通して好きなバンドがLUNA SEAだったので、まずはダメもとでSUGIZOさんにお願いしてみましょう、と。それが実現したんです! そして、企画書と脚本をお渡しした時には、SUGIZOさんから「LUNA SEAのとある楽曲を提案したい」と。「この映画にピッタリなんじゃないかな」と言っていただいて。
――それが、あの楽曲ですね! ネタバレになるので書けませんが。劇中歌も、とてもすてきでした。作中で重要な役を演じる藤重政孝さんが、サイコーにかっこよく歌っています……!
レコーディングの場に立ち合わせていただいたのですが、プロ同士の阿吽の呼吸でどんどん歌入れが完成していきました。藤重さんの個性が生きていると思います。
――さらに、レコーディングには真矢さんまでドラムで参加していると! お聞きした時は、ぶっ飛んだのではありませんか?
その知らせを受けた時は外にいたのですが、このまま車に轢かれるんじゃないかと思いました。それくらい、今も夢心地でいます。
――(笑)。本当に、たくさんの方に見ていただきたいですね!
はい。私はヒップホップジャンルのコンテンツに携わることが多かったのですが、今のヒップホップに、かつてのヴィジュアル系のムーブメントのような盛り上がりを感じるんです。小さなライブハウスから始まったイベントが、どんどん大きな箱でやるようになり、最終的には幕張メッセで開催するくらいの規模になっていって。それって、私が高校生の頃に観た数々のバンドや当時、興奮して毎年参戦していたイベント「JACK IN THE BOX」の流れに似ているなとも思いました。
一本の映画で、当時と同じようなムーブメントを起こすのは難しいとは思いますが、この映画を観て、一人でも多くの人がヴィジュアル系バンドに興味を持ったり、自分の好きなカルチャーへの愛を再確認してもらえるきっかけになれば、とてもうれしいです。
【作品詳細】
映画『V.MARIA』
公開期間/2025年4月1日〜14日
公開館/目黒シネマ
*
出演:菊地姫奈 藤重政孝、真雪、吉田凜音、サヘル・ローズ、西村瑞樹、まいきち、大島璃乃、佐藤流司、藤田朋子
監督:宮崎大祐
音楽:SUGIZO
脚本:池亀三太
注目V系バンド Azavana、BugLugの一樹(Gt)、優(Gt)、 燕(Ba)、悠介(Dr)、ΛrlequiΩ の祥平(Ba)も参加!
<あらすじ>
母子家庭で育った主人公(マリア)は母の突然の死後、遺品整理をしている中で母が若い時に収集していたCDと写真、日記、そして自分と同じく「MARIA」と名付けられた再生できないデモテープを見つける。母が生前隠していた秘密とは? デモテープの中身は一体どんな曲なのか? 母の秘密を知るためにマリアはライブハウスへと向かう。そこで待っていたのは、ヴィジュアル系と呼ばれる奇天烈な音楽だった。
(※公式情報から引用)
https://x.com/Mcinema_MMJ
https://www.instagram.com/mcinema_mmj/
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