埼玉県ゆるゆる全市郡ひとり旅12 ーふじみ野市ー

2010年12月第5週
ーふじみ野市ー(12箇所目)

3カ月ぶりの旅である。

今回どこかに行けば1年で12箇所。
月に1回のペースで旅をしたことになって
キリがいいので、どこかしらに行きたい。

といっても、年の瀬ということもあり、
お店や美術館は閉まっているところも少なくない。
だったら、「何もない街に行けばいい」と思い、
今年最後の旅の行き先に選んだのが「ふじみ野市」である。

実は、このふじみ野市については、読者から
「何もない街です」と事前に情報をいただいたことがある。
私自身もインターネットなどで調べたが、
名産品やゆるキャラ、人気スポットなどは特になさそう。
(※埼玉県では自治体の「ゆるキャラ」マスコットづくりに
力を入れており、同市でも2010年12月初旬にマスコット
キャラが決定しているが、同時点でのグッズ販売などはなかった)

ただ、ふじみ野市はその名が示す通り、
富士山の見えるスポットが市内に点在している。
富士山を見たらあとは何もないけど、たまには、
目的もなくブラブラするのも悪くないかと思い、家を出た。




東武東上線「上福岡駅」に到着したのは、午後0時30分。
各駅停車でしか停まらない駅ということもあり、
大きな商業施設などは特になく「ザ・ベッドタウン」という感じ。
駅前にはメガネ屋や100円ショップ、マクドナルドなどが
入った小さい複合商業施設があるが、
基本的には住宅街ということもあり、空が広い。
雲一つない快晴で、これなら富士山も見えそうだ。

1つ目の富士山スポットは駅のロータリーへと
続いている、見晴らしのいい直線の道路だ。
淡く、青いグラデーションを描く冬の高い空。
3カ月前とは違うその表情に、季節の移ろいを感じる。
年末ということもあってか、車の交通量も少なく、
ゆったりとした時間が街全体に流れているよう。

それにしても、キレイな空だ。
遮るものなど、何もない。
そう、富士山さえも。
……ない、ない、どこにもない!




手元のスマートフォンで見る
同市のウオーキングマップには、
同じ場所、同じ空に雪化粧をした富士山の姿がある。

この場所で間違いない。
間違いないが、富士山もない。

こんなに天気が良くても見えないなんて……。
とりあえず昼食でも食べようとトボトボ歩いていると、
駅の近くの駐輪場に「貸自転車あります」の文字が。
自転車があると移動がとてもラクチンなのだ。
一気にテンションが盛り返す。

それにしても、インターネットで調べても
レンタサイクルの情報は見つからなかったのに。
やっぱり、自分の足で見つけることも重要だなあ。

昼食は後にして、「新河岸川の眺めと舟運の
歴史を訪ねるコース」を走ることにする。
マップには、ほかにも同じようなコースが3つほどあるが、
お寺とかそういうのばかりで、
イマイチ興味が湧かなかったのだ。

同コースの1箇所目は、「八雲通り商店会」という
商店街の中にある「八雲神社」。
石製の鳥居に歴史を感じる。
いかにも古そうだ。



八雲神社よりも私の興味を惹いたのは、
商店街のとある店先に貼ってあった、1枚の張り紙。




「バルサン中」と殴り書きしてある。
きっと、大掃除をしているのだ。

以前、「バルサンをすると、見たことも
ない虫が出てくる」と話している人がいた。
私はバルサンをしたことがないので、わからない。
シャッターの向こう側の景色は、どうなっているんだろう。

阿鼻叫喚の虫地獄?
エイリアンみたいな虫がいたらイヤだなあ。
少し気になる。

商店街を抜けてコース通りに進む。
買い物袋を両手に下げた人の姿が目につき、
年末なんだなあ、と改めて実感。
人が多いと、どこか安心する。




そのまま進んでいると、市内を流れる新河岸川に当たる。
ちなみにこの川は隅田川へ合流し、東京湾へと流れ着く。
江戸時代(1730年頃)~昭和初期まで、江戸と川越を
結ぶ舟運の水路として利用されていたらしい。




そして、この養老橋というところのすぐそばには、
吉野屋土蔵という文化財(?)と福岡河川記念館がある。
同記念館では、当時の舟運の様子を再現するなど、
この地域の歴史と地域の文化などを紹介しているらしいが、
年末なので休館している。

休館ということは事前に認識していたが、
趣きのある建物という紹介がされていたので、見てみたかったのだ。
記念館の面する道路は石畳の坂になっており、
パッと見、なんとなく京都っぽい気がする。
はんなり。




川沿いの道を進む。
小山の上に仏たちがいる不思議な場所があったり、
男心をくすぐる工場があったり、古墳群があったり。

古墳群は「史跡の森」とされていて、
なんだかリスや森ガールが出てきそうな雰囲気。
1箇所、古墳らしきモッコリしているところが
あったけど、よく分からなかった。
そもそも、やはり興味がないのかもしれない。
でも、古墳と聞くと男心にロマンを感じるので、
とりあえず見に行ったのだ。




お腹が空いたので、自転車で走っていて見つけた
「びっくりラーメンやまざき」というお店に入る。
同店は、チェーンの飲食店が台頭する以前に開いたであろう、
個人営業のファミレス兼居酒屋の
ようなお店で、客席は50席くらい? 
2階では宴会もできるみたいで70人まで
入れるとのことなので、結構広い。

午後2時すぎということもあり、
店内は比較的すいている。
先客にはスーツ姿のサラリーマンと
常連客らしき50、60代のおばちゃん2人組がいる。

メニューはラーメンを始めとする中華料理などのほか、
洋食メニュー、定食メニューなどが幅広くそろっている。
せっかくなので、看板メニューの1つという
「びっくりカツカレー」を注文。

店内のテレビには「ミヤネヤ」(日本テレビ系)が映っており、
某女性タレントによるTwitterでの不倫暴露の話題で持ち切りだ。
それを見ながら、すでにお皿を空けたおばちゃんたちが
ああでもない、こうでもないと議論を交わしている。

「なんで大してカッコ良くもない男とぉ……ねえ~?」
「いや、こういう信念持った男にっ! オンナは弱いんだっっって!!」

力の入るおばちゃんA。

「えぇ~。アタシなら…………、っないけどなぁ~」
と、おばちゃんB。

「余計なお世話だよ」と心の中で
ツッコミを入れていると、愛想のいい店員さんが
「お待ちどうさま」と料理を運んで来てくれた。




でかい(特にお皿)。
遅めの昼食なのでおなかはペコペコ。
量こそ多いが、食欲を刺激するスパイシーな香りも
手伝ってか、なんとか平らげられそうな気分になる。

まずはスプーンで、ご飯の上のカツを食べやすい大きさにする。
ルーをたっぷりからめて、口に運ぶ。

……お肉がプリプリだ!
ルーは、小学校の給食に出てくるような、
少し甘口だけどコクのある味わい。
とろとろになったタマネギは、
口の中でほのかな甘みを残して消えていく。

これはおいしい!
スプーンを運ぶスピードが上がる。
ルーがアツアツなので、口をハフハフさせながら食べる。
この「ハフハフ感」がおいしさを増すんだよなあ、きっと
「食べてる」ってことを認識するのだ。

3分の2ほど食べたところで
胃袋が悲鳴を上げ始めたが、なんとか完食。
苦しい。

水を飲んで食休みしていると、
おばちゃんたちは「神田正輝はヅラだ」という話をしていた。
なんのこっちゃ!

でも、ずっと笑ってて幸せそうだった。
年末にも関わらず、ここにお喋りしに来て。
私にとっては偶然立ち寄ったお店でも、
おばちゃんたちにとっては、
日々の生活を豊かにする大切な居場所なんだろう。

さて、「新河岸川の眺めと舟運の歴史を
訪ねるコース」ももうすぐ折り返し。
もっとも、その主旨にあった楽しみ方はしていないけど……。

折り返し地点にある川沿いの土手には、
もう1つの富士山スポットがある。

わずかな期待を抱きつつ富士山の方角を見ると、
かすかに山々のシルエットが見える。
明らかに富士山の形ではない。
でも、もういいのだ。




折り返し後は特に見たいものもないので、駅へと向かうことにする。
途中、いくつものゴミ袋が不法投棄されていて、
ビデオテープもむきだしになって捨てられていた。




「捨てられているビデオテープ」といって
男が連想するものは「AV」だ。

私が中学生の頃、「けんぼー」という友人と下校していると、
空き地に大量のエロ本とビデオテープが捨てられていた。
エロ本と一緒に捨ててあるビデオテープといったら、AVしかない。

「持って帰ろう」とは言わなかった。
言葉は交わさなくとも通じ合うもので、
けんぼーはそそくさとそのビデオテープを鞄に詰めた。

そのままけんぼーの家に行き、ビデオを再生すると、
裸の男女がテレビに映し出された。

「あんあん、あっあーん」

思春期真っただ中の私はドキドキした。
モザイクがかかっていたが、当時15歳。
局部が映らず、モザイクすらかからない
R指定のビデオでさえレンタルできないお年頃である。
当時は今ほどインターネットも普及していなかったので、
AVを持っているヤツはクラスのヒーローだった。

画面に釘付けになっていると、
「やばい、もうこんな時間だ」とけんぼーが言った。
ほかの友人たちと一緒に遊ぶ約束を
していたのだが、30分ほど過ぎていた。

「帰って来たらまた見よう」ということになり、
けんぼーは偽装のためにビデオテープのラベルに
「ウッチャンナンチャン」と書いて自分の部屋に置いていった。

友人たちと別れ、けんぼーの家に戻ると、ビデオテープがない。
けんぼーの兄か母が部屋に入り持っていったに違いない、とけんぼーは話した。

今思えば、当時「ウリナリ」「ウッチャンナンチャンの
気分は上々!」など人気番組をいくつも抱えていた
ウッチャンナンチャンの名前をどうして書いたんだろう、と思う。
どうせなら、もっとだれも興味がないような番組名なり
何なりを書けば良かったのに……。

そんなくだらないことを考えていたら、
視界にノスタルジックな雰囲気が漂う
銭湯の煙突やコインランドリーが入ってきた。
1度でいいから、彼女と銭湯に行って、
外で待ち合わせとかしたかったなあ。

銭湯が面している商店街を抜け、上福岡駅へ到着。
今年最後の「埼玉の旅」はこれで終わり。
滞在時間は約3時間ほど。




実はこの後、隣の「ふじみ野駅」で降り、「RiSM」という
アウトレットモールへ行ったが、かなり閑散としていた。
早々に立ち去り、ふじみ野駅へ戻る。

記念品になるお土産もないので、ふじみ野駅で
切符を買ってそれを記念品にしようとしたが、
購入後にふじみ野駅はふじみ野市ではなく、
隣接する富士見市内にあることが判明。
なんとも締まりの悪い結末となった。




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