埼玉県ゆるゆる全市郡ひとり旅9 ー秩父郡(前半)ー

2010年8月第2週
―秩父郡(前編)―(9箇所目)

暑い。とにかく暑い。
Yahoo!ニュースには「熱中症、各地で死者続出」の見出しが踊り、
お天気キャスターのお姉さんは開口一番「連日猛暑日」という。
「埼玉の旅」の移動手段は基本的に徒歩なので、
この暑さはシャレにならない。

そこで、今回は“涼”を求めに、秩父郡の長瀞町まで行くことに。
去年、長瀞町で食べた「阿佐美冷蔵」というお店のかき氷が食べたい。
きめ細かい、ふわっとした天然氷にかかる果汁たっぷりの濃厚なシロップ
――あの味が忘れられないのだ。

秩父郡のことを調べてみると、
長瀞町・皆野町・小鹿野町・横瀬町・東秩父村という
5つの自治体から成っていることがわかった。
そして、旅の予定日には、皆野町で「秩父音頭祭り」が開かれるとのこと。
かき氷とお祭り……、夏を満喫出来そうである。


東武東上線で、秩父鉄道秩父本線「長瀞駅」へ。
途中、東武東上線の「小川町駅」と「寄居駅」で乗り換えるのだが、
乗り継ぎが悪く、秩父線に乗り換える「寄居駅」で40分ほど待つ羽目に。

電車の移動時間だけで2時間以上も掛かってしまったが、
車窓からの風景を眺めるのに夢中で、退屈はしなかった。
目的地へ近づくほどに、深まる緑。
川では、バーベキューをしていたり、
子供たちが川遊びをしているのが見える。
自然が豊かだ。なんだか旅っぽい。

それもそのはず、同郡は秩父市(“秩父郡”は上記5自治体の総称、
“秩父市”は独立した1つの自治体)と併せた「秩父地方」として見れば、
長野県・群馬県・山梨県に隣接するような場所なのだ。
埼玉県の最西部である。

午後0時50分、「長瀞駅」に到着。
とりあえず、鼻から胸いっぱいに息を吸い込んでみる。
空気が新鮮だ。

改札には、駅員さんの姿。
このご時分に、自動改札ではないのだ。
当然、スイカやらPASMOやらは使えない。
うんうん、こういうのもなんだか旅っぽいぞ。
埼玉でこんな気分が味わえるなんて。




改札を出ると、「ライン下りはいかがですか~」とおじさんが声を上げている。
立て看板には、三角の帽子をかぶった船頭さんが小舟に立ち、
雄大な渓谷の中を進む写真が貼ってある。
秩父鉄道のホームページなどで紹介されていたので、
川下りが出来ることは知っていたが、私はあえて乗ろうとは思わなかった。

長瀞を流れる荒川。
色はエメラルドグリーンで、見ている分にはとてもキレイだが、
下流ということもあってか流れは早いし、とっても深そう。
私はかなづちなので、落ちたら助からないと思う。
あの船、転覆したりしないんだろうか。
まだ死にたくない。

しかし、「せっかく来たんだから」という思いが頭をよぎる。
さらに、看板をにらんでいる私を見て、
おじさんが「今ならすぐに乗れますよ」と話しかけてきたので、
勢いでチケットを買ってしまった。

乗り場は駅の反対側の「岩畳」(国指定天然記念物で幅80m、
長さ500mの自然岩石。岩の畳を敷き詰めたように見える)にあるというので、
踏切を渡って看板の案内通りに進むと、5分ほどで河原に着いた。
土曜日ということもあってか、観光に来ている家族連れやカップル、
大学生のサークルらしき集団が多い。

河原の出店では、鮎の塩焼きや
焼きトウモロコシが売っていて、食欲をそそる。
初々しい高校生くらいのカップルが
「買わない? 買う? じゃあ、半分こにしよっか」
なんてやりとりをしている。

焼きトウモロコシなんて食べたら、
笑った時、歯に挟まったモロコシの皮が見えちゃうぜ。




「ライン下りの方はこちらへお越し下さい」
という声が聞こえたので、乗り場へ向かう。

川原へおりると、「長瀞ラインくだり」と書かれた
法被(はっぴ)を着た船頭さんらしき人がいる。
“らしき”と書いたのは、三角の帽子をかぶっていなかったから。
むしろ、ちょっと金髪。いまっぽい。

船頭さんというと、黒髪短髪の高倉健さんのような
渋い人のイメージだったんだけど、
高倉健というよりはプロレスラーの高山善廣さんに似てる。

一番乗りだった私は、左最後方の席に座った。
5分ほどで席が埋まり、出発進行!! と思いきや、船頭さんが一言。

「船が傾いてるから、大人2人、左側に移動して」

……こわい。
私のいる左側には、家族連れの子供と女性が多かったのだ。
前方と後方それぞれに船頭さんがいて、
あとは全長9mほどの船の中に乗客26人が身を寄せ合って座っている。

船頭さんが竹棒のようなものを巧みにさばき、
方向転換をしながら進んでいく。

見所などのガイドをしてくれるほか、
「今日は2人くらい落ちる予定です」なんて、
ウエットに富んだジョークを飛ばして、乗客の笑いを誘っている。

眼前に広がる水面と高い空、横を向けば岩の絶壁。
中国の水墨画みたいな景色だと思った。
水面が近いので、涼しくて気持ちがいい。




最初はゆったりだった流れが
ところどころで激しくなり、水しぶきを上げる。

船にはビニール製のカーテンのような物が取り付けられていて、
乗客全員でそれを持ち上げ、水しぶきを防ぐ。
それでもたまに水が飛んできて、
女性たちは「も~、やだぁー」なんて言っていた。

「ぶっかけられて、濡れ濡れの人妻です」

自分が船頭さんになった気分で、“ウエット”なジョークを考えていたら、
ゴール地点に到着。30分3kmの旅は、これでおしまい。

ゴール地点からは無料の送迎バスが出ていて、
「長瀞駅」まで戻ることができる。
バスに乗って外を見ていると、
さっきまで乗っていた船がクレーンで吊り上げられ、
トラックに積み重ねられている。

船で戻ることはできないので、
トラックで出発地点まで「運搬」するらしい。
びっくり。




「長瀞駅」まで10分ほどで戻った後は、岩畳坂道という、
お土産屋や飲食店が集まった商店街のような所をぷらぷら。
観光地だけあって、大勢の人で賑わっている。

道行く人たちは、きゅうりの一本漬けなどを片手に歩き、
幸せそうにそれを頬張っている。
私は特に食べたいものが見当たらなかったので、
当初の目的地である「阿佐美冷蔵」のかき氷を食べに行くことにした。




同町のHPを見た時、観光協会でレンタサイクルの
サービスをしていると書いてあったので、駅前の観光協会へ。
ここのレンタサイクルは、なんと電動自転車。
観光スポットである、宝登山への坂道も登れるための配慮だという。

乗ってみると、坂道でもビュンビュン進む! すごい!!
本当、どの自治体でもレンタサイクルくらい駅前にあればいいのになあ。




午後2時頃、少し道に迷いながらも阿佐美冷蔵へ到着。
敷地内に入ると、そこには敷地いっぱいにできた蛇形の行列と、
それを誘導する警備員の姿が。店内で食べる人は1時間待ち、
外の特設スペースで立ち食いするなら30分待ちとのこと。

1時間も待つのはダルいし、特設スペースでは
シロップがセルフサービスになっていて、
色々な味を楽しめるというので、立ち食いすることにした。

しばらく行列に並んでいると、ポツポツと聞こえてくるこんな声。

「もう並ぶのヤダ。駅前のかき氷でいいじゃん」

行列は、どこの行列も同じだ。
以前、加須市の旅でジャンボ鯉のぼりを観に行った時、
会場までのバスを待つ行列に並んでいたところ、
「こんなに並んでられない」「もういいよ、帰ろうよ」など、
リタイアする人の姿が見受けられた。

行列の中程まで進むと、丸桶の中に氷で冷やしたトマトが売っている。
田舎っぽさも手伝ってか、いかにも美味しそうだけど、
かき氷の美味しさが半減しそうな気がするのでガマン、ガマン。




かき氷は、一つ600円。
「日本むかし話」に出てくるご飯みたいに山盛りだ。
天然氷を使っているとのことで、コンビニのかき氷みたいに、
ガリっ、ゴリっと氷を砕くような食感はない。
ふわふわなのだ。

シロップは、「みかん」「メロン」「いちご」
「アールグレイティー」「ぶどう」「キャラメル」の6種類。
周りを見ると、一つの味を満遍なく氷にかけている人、
アーノルドパーマー(アパレルメーカー)のロゴマークの
傘のようにキレイに6等分している人、
とにかくごっちゃ混ぜであまり美味しくなさそうな
色になっちゃった人など、人それぞれ。

私はみかんのシロップをたっぷりかけて、
あとは一口ずつ他の味を食べた。うまい!! 
果物系のシロップは果汁50%とのこと。濃厚でおいしい。

お土産コーナーに、阿佐美冷蔵の“「氷」のぼり”があったので購入。
今回の旅の記念品である。




かき氷を食べた後は、自転車で市内をプラプラ。
住宅一軒ごとの間隔がとても広く、父の実家がある岩手県を思い出した。
遠くには山々が見える。




午後4時30分から始まる「秩父音頭祭り」まで、
あと30分ほどのところでレンタサイクルを返却して、電車に乗り込む。
目的地の「皆野駅」までは3駅。この時点で、滞在時間は3時間。
今回の埼玉の旅は、少しだけ長くなりそうだ。

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