埼玉県ゆるゆる全市郡ひとり旅6 ー加須市ー

2010年5月第2週
ー加須市ー(6箇所目)

ゴールデン・ウィークである。
高速道路の渋滞に関するニュースが連日報道されているが、
選択肢が埼玉しかない私にとっては関係がない。

今回は、加須(かぞ)市の「市民平和祭」に行こうと決めていた。
全長100mもあるというジャンボ鯉のぼりの遊泳を見たかったのだ。

加須市に行くのは初めて。
鯉のぼりが特産(日本一)ということも、今回初めて知った。
というか、以前は「かすし」だと思っていて、
友人に間違いを指摘されたことがある。
でも、その友人は、「竜田揚げ」のことを
「りゅうたあげ」と読んでいたので、おあいこだろう。

東武伊勢崎線に乗り継ぎ、「加須駅」へ。
が、また電車の乗り継ぎを間違えた。
10時20分に到着予定が50分のロス。
今のところ、2回に1回は電車を間違えている気がする……。
ゴールデン・ウィークということもあってか、車内は混んでいた。

駅前は、空が広くていかにも田舎、という感じ。
埼玉の中でも北東に位置していて、
群馬・茨城・栃木に隣接している。
結構奥地だ。




駅から近くの駐車場で、会場までの無料のシャトルバスが出ていると
HPに書いてあったのでバス乗り場へ行くと、すでに長蛇の列が。
案内係の人に聞くと、約300人並んでいるとのこと。
一瞬歩こうかと悩んだが、会場まで10km超あり、
90分はかかると言われたので、おとなしく並ぶことにした。

行列に並んでいる人を見ていると、3パターンの人間がいることがわかった。
まずは、お喋りやしりとりをする「人を暇にさせない系」。
次に、ボーっとしたり、音楽を聴くなどする「苦境受け入れ系」。
そして、行列を外れて我が道を行かんとする「おれは行くぜ系」だ。

「おれは行くぜ系」の人は、並んでしばらく経つと
「ダメだ、絶対間に合わねぇよ」とか、
「こんな並んでられない、タクシー乗ろっ」
といった捨て台詞を吐いて去っていく。

しかし、タクシー乗り場も20人以上は並んでいたし、
係の人が無線でタクシーは全て出払っていると
話していたのを私は聞いていた。
待っていればいいのに……。

なんだか『名探偵コナン』などで、殺人が起きた時に
「殺人鬼と同じ部屋で寝られるかよっ」と言って皆のいる部屋を飛び出し、
しばらくして無惨な姿で見つかる登場人物に似ているな、と思った。

そんな私は「苦境受け入れ系」。
もう深谷市のように歩くのはイヤだから、
15分間隔で運行しているシャトルバスをじっと待っていた。
ジャンボ鯉のぼりの遊泳開始は午後1時30分からなので、
13時までに乗られれば間に合うだろうという計算だ。

しかし、バスが40分以上経っても1台しか来ていない。
どうやら、会場への道が渋滞で進んでいないとのこと。
それどころか、今並んでいる人たちの多くが
鯉のぼりの遊泳までに間に合わないかもしれないという。
なんと、まあ。暑い中、50分も待ったのに。
「おれは行くぜ系」が正しかったのだ。

時計の針は正午を指している。
今すぐ出ればギリギリ間に合う、ということで結局歩く羽目に。
こんなに歩いてばかりの旅になるなんて、
この連載を企画した当初は思っていなかった。
万歩計でも買っておけば良かったな、と思う。

後ろを振り返ると、まだ200人ほどの人がバスを待ち続けていた。




係の人にもらった会場までのマップを頼りに歩いていく。
会場までは、ずっと直進していけば着くようなので、迷う心配はなさそう。
10分ほど歩いて再び地図を見ると、なんと行程の半分まで進んでいる。
20分も進むと、4分の3の距離まで進んでいる。
おかしいと思ったが、目印となる建物が確かにあるのだ。
間違いない。

「90分って、高齢者向けの所要時間なんじゃないの?」と
思ってさらに進んだが、いつまで経っても会場に着かない。
でも、ずっと直進なのだから、間違うはずがないのだ。
先に行列を出て行った人たちの背中も見える。

しばらく歩き続けると、「会場まであと6km」の看板。
マップの残り4分の1の縮尺がデタラメにおかしかったのだ。
もうすぐ着くと期待していたので、一気に落胆。
でも、天気が良いから、まあいいか。

市街地を抜けると、視界に広がったのは田園風景だ。
田植えをしたばかりの水面がキラキラと輝いてキレイ。
歩道を田植機が走っていたり、父の実家がある岩手を思い出した。
川もいくつかあったので、ザリガニがいないか見てみたが、1匹もいなかった。
私が小学生の頃はよくいたものだが、最近ザリガニをまったく見なくなった。
糸にさきいかを結んだだけの特製釣り竿が懐かしい。




結局、80分ほど直進して会場付近に到着。
地図の縮尺がデタラメだったことを繰り返したい。
途中、渋滞につかまっていたシャトルバスを追い越した。
私が並んでいた時に発車したバスだった。

会場になっていたのは、利根川沿いの土手。
会場の1km付近まで行くと、
ジャンボ鯉のぼりを吊り上げる巨大クレーンが見えた。
近くの施設には、子どもたちがペットボトルでつくった鯉のぼりが。
前を歩くおばあちゃんたちが微笑ましそうに眺めていた。
「孫のことを考えているのかな」なんて思うと、
最近親になった身としては、ウルッとくる。




土手を登ると人、人、人。
斜面にビニールシートを敷いてお弁当を広げる家族連れや、
何百mmあるんだよとツッコミたくなるような
望遠レンズを構える鯉のぼりマニア(たぶん)がいた。
お父さんたちはビール片手に焼き鳥を頬張っていたり、
子どもたちはワタアメを食べていたりと楽しそう。
土手の下には、たくさんの出店と舞台ショーなどを行なうステージ、
平置きにされた巨大な鯉のぼりがあった。

到着して間もなく、ジャンボ鯉のぼりの遊泳をするというアナウンスが流れた。
間に合って良かった。駐車場に残った人たちを思わずにはいられない。

ジャンボ鯉のぼりは直径10m・全長100mもあり、
世界一の大きさとのこと。
風速4~6mの時にしかクレーンで吊り上げられないらしく、
アナウンスが流れてからの5分間、
会場中が今か今かとクレーンの方向を見つめていた。

「条件が整いましたので、遊泳を開始します」
というアナウンスが流れると、歓声が沸いた。
口から風をはらませながら、徐々に空へと昇っていく。
快晴の大空を悠々と泳ぎ始める鯉のぼりを見ていたら、
気づかない内に拍手をしていた。




しかし、本当にでかい!! すごい!! 
人を背にして写真を撮ると、なんだか特撮映画の怪獣のようにも見えた。
みんな写真を撮るのに夢中なのに、そんなの知ったこっちゃない、
というようなトボケた表情の鯉のぼりとのギャップも面白かった。

自分も空を泳いでみたい。
きっと、気持ちいいだろうな。
なんとなく、晴れの日にゆっくり自転車で
走る感覚に似ている気がする。




20分間の遊泳終了後は、出店でビールとお好み焼きを購入。
舞台ショーの椅子に座って食べていたら、
「稲穂戦隊スイハンジャー」というご当地ヒーローが出てきて、
ジャンケン大会が始まった。

司会の若手芸人らしき人たちのグダグダな司会。
子どもたちを見て、にこにこ笑っている親やおじいちゃん、おばあちゃん。
鯉のぼりの着ぐるみを着た変なおじさん。
一帯が幸福感に包まれているようだった。

帰りはシャトルバスに乗って駅まで行った。
滞在時間は約5時間。

後でニュースを見て知ったが、
同イベントには10万もの人が足を運んでいたという。
旅の記念品は、同市限定の「鯉のぼりキューピー」だ。



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