埼玉県ゆるゆる全市郡ひとり旅5 ー吉川市ー

2010年5月第1週 
ー吉川市ー(5箇所目)

随分久しぶりとなってしまったが、
旅もようやく5箇所目である。

この2ヶ月間、何をしていたかというと、
いや、実際には私は何もしていないのだけれど、妻が出産をした。
私は妻に付き添ったり、子どもに首ったけだったりして、
旅どころではなかったのである。

落ち着いてきたら、2週間に1度くらいは
埼玉の旅に出かけたいと思う。

今回行ったのは、埼玉県の東南部にある吉川市。
千葉県の流山市などに隣接している。
特に思い出はないのだが、なんとなくパッとしない寂れたイメージ。
そういえば、学生時代の友人が同市の高校に通っていたっけ。

お昼過ぎ、翌日の取材で使うカメラを職場まで取りに行ったので、
武蔵野線「吉川駅」に到着したのは午後2時。
最近は日がのびてきたので、これくらいの時間に到着しても気が滅入らない。

吉川市の名物といえば、なまず料理らしい。
「吉川に来て、なまず食わずなかれ」と言われるほどらしく、
元総理大臣の福田赴夫氏や中曽根康弘氏も
吉川に来てなまず料理を食したとのこと。
淡白で美味しいらしい。

今回は、なまず料理を食べるだけに来たようなものである。
今日は、午前10時にわかめご飯を食べたきり、何も口にしていない。
腹の虫が鳴いている。早く食べたい。

今回は、強力な助っ人がいる。レンタル自転車だ。
観光者向けに、駅前に無料で貸し出しを行なっているのだ。

嬉しい。すごい嬉しい。
いつだか、「歩いてこそ、気づくものがあると思う」という
主旨の発言をしたような気もするが、国道散歩は深谷市でもう懲りた。
少しくらい遠い場所でもヘッチャラである。
自転車バンザイ!! 

改札を出ると、黄金色に輝くなまずのモニュメントがあった。
やることがシンプルかつ大胆で清々しい。
記念にパチリ。




まずは、観光案内兼お土産屋の「ラッピーランド」で情報収集。
6帖ほどの店内に入ると、なまずの形を模した「なまずせんべい」や、
デフォルメされたなまずのイラスト入り手ぬぐいなどが売っていた。
開店時間が午後5時までだったので、先に記念品を買うことにした。
置物好きな私が購入したのは「なまずぬいぐるみ(ミニ)」。
さすがに、もう少し名前をひねった方がいいような気がする。

お店のおばちゃんから、市内のマップをもらった。
どうも、観光名所は特にないよう。
それどころか、マップの案内役を務める
「さんぽチャン」という若い女性のマスコットキャラが
「吉川ってのどかでいいところだわ~」なんて言っている。
発想の逆転というか、開き直りというか・・・。
でも、東京のベッドタウンだけあって、
住宅や飲食店が多いようで安心した。

5分ほど歩き、自転車をレンタルした。
これが、今回の旅の愛車「レンタサイクル9号」である。
使用感こそあるが、定期的に手入れされているようで乗り心地はバツグン。
五月晴れの中、ゆるりとサイクリングである。




イヤフォンを外すと聞こえてくる、自転車が風を切るかすかな音。
大きく息を吸い込むと鼻いっぱいに広がる新緑の匂い。
陽の光を反射して輝く水面は眩しいけれど、ずっと見ていたいとさえ感じた。
最近の慌ただしさにやられた頭をリセット。
また明日も頑張ろう、なんて。




15分ほど走り、なまず料理を食べられるという
「福寿家」(ふくじゅや)近辺に到着。
マップが大味なつくりのため、詳しい場所がいまいちわからない。
マップには同店のほかにも、「糀家(こうじや)」「ますや」
「魚竹(うおたけ)」という3店舗が、
なまず料理を食べられるお店として紹介されていたが、
縁起の良さそうな名前なので、どうしても「福寿家」に行きたい。

そんなこんなで、マップを頼りに先に進むと同店の看板を発見。
前述した通り、空腹感はピークに達していたので、
「ようやくご飯だ」と安堵した。
なんでも、なまずの天丼が売りらしいとのことで
楽しみにしていたのだが、さらに進むと
老舗旅館のような店構えであるということが判った。

玄関には、遠くから見てもその高級感がわかる大きな五月人形と金屏風。
「●●様」と書かれた予約の立て看板もある。駐車場には、車がずらり。

……考えていたものと違う。
帰宅してから同店のことを調べたら、
なんと200年続く老舗料亭だった。
そんな高級店、一人で入れる訳がない。
仕方がないので、そこから1番近い「糀家」に行くことにした。

細い路地裏のような道を進んでいくと、
すぐに「糀家」の看板が目に入った。
が、塀にはいかにも高級店らしい松の木。

なんだか嫌な予感。
恐る恐る門の中を覗いて見ると、
30mほどの石畳の向こうで和服を着た女将さんらしき人が、
お店を出ようとしているベンツに向かって、頭を深々と下げていた。

これは、もう、明らかに私が入っていい場所ではない。
石畳と松の木が演出する高級老舗料亭に、
小汚いレンタサイクルでベンツの横を軽快に
「チャリンチャリン」と入っていく余地など、どこにもないのだ。
なんでも、こちらは創業400年。
新撰組局長の近藤勇氏や明治時代の政治家である
板垣退助氏らが舌鼓を打ったという。




悲しい。
なまず料理を食べるためだけに、ここまで来たのに。
せめて自転車がなければ・・・。
新緑の匂いがどうこうという、
ポエミーな文章も空しいだけである。

時計の針は午後3時を回ろうとしていた。
そろそろ、夜に向けての仕込みに映る時間である。
ダメ元で残りの2店にも行ったが、「ますや」は準備中、
「魚竹」に至ってはお店がなくなっていた。

いつまでも、しょげていても仕方がない。
お腹は空いたし、書くことが何もなくなってしまうので、
「なまずコロッケ」と「なまずメンチ」を販売しているという精肉屋に行き、
「なまずメンチ」を購入(「なまずコロッケ」は売り切れていた)。

閑静な住宅街を、自転車で走りながらアツアツのメンチカツを頬張る。
なまずのすり身が入っており、若干風味がある。
ジューシーで美味しかった。




なまず料理らしいものは食べられなかったが、
自転車に乗りながらメンチカツだなんて、
なんだか学生時代に戻ったよう。
これはこれで良いかな、とも思う。
その後、1時間ほど市内をのんびり走って帰路についた。
滞在時間は約2時間30分。

いつか、なまず料理を食べにまた来るのだ。

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