埼玉県ゆるゆる全市郡ひとり旅3 ー北本市ー

2010年1月第5週
ー北本市ー

旅の3箇所目は、北本市。
「県央」と呼ばれる地域に属しており、
県の中央より少し東に位置する街だ。

北本市に関する記憶を探ってみると、
高校時代に通っていた塾の先生にお遣いを頼まれ、
同市にある塾の分校まで、友人とお届け物に行ったことがある。
その際、電車の本数がとても少なかったことから、
田舎っぽい、というイメージしかない。
例のごとく、「あの街、何かあったっけ」と不安になる。

観光協会のホームページを見てみると、
トマトが名産のようで、いちご大福ならぬ
トマト大福というものがあるらしい。

また、ソバも名産品として推しており、
トマトそばコロッケという、ジャガイモの代わりに
ぶつ切りのソバを使い、その中にミニトマトを入れるという、
なんだか罰ゲームのような食べ物まである。

美味しいのだろうか。……食べたい!
もはや、旅というより、ただの怖いもの見たさである。

午前11時過ぎに家を出る。
「大宮駅」で乗り換えの電車を待っている間、
少しでも旅気分を味わおうと、
駅弁屋で「昔懐かしカツサンド」と発泡酒を買った。

カツサンドの箱を見ると、
「昭和の食堂車のソースレシピを再現!!」という
謳い文句のほかに、SL列車の絵が描いてあり、
なんだか旅行っぽいデザイン。

それを肴(さかな)に発泡酒を飲んだのだが、
駅のホームでお酒を飲むという開放感からか、
350ml缶1本でいい気分になってしまった。

「こりゃあ、いい旅になりそうだぞ」
そんなことを思いながら、電車に乗った。

窓から覗く風景は、とても殺伐としていた。
畑と田んぼばかりなのだ。収穫期を過ぎ、
緑を失った田んぼと畑には、物悲しさを覚える。叙情的だ。

「叙情的」といえば、以前、ファッションカタログの秋号で、
私が「叙情詩レディの○○」というコピーを提案し、
クライアントから好評を得たことがある。

結局、その号では、日の目を見ることがなかったのだが、
自分の作品は大切に温めておこうと、
新たに使う機会を見計らっていた。
しかし、同じカタログの冬号で、
上司が私のコピーを無断で使用していた。
しかも、巻頭企画で。

その上司とは今でも交流があり、飲みに行ったりもするが、
この件に関しては、未だに根に持っている。

それはともかく、「北本駅」になかなか着かない。
「大宮駅」からは5駅くらいのはずなのに。
それどころか、「久喜駅」という、
高崎線が通っていないはずの駅を通過しているのだ。
おかしい。

おかしいのは、私だった。
高崎線ではなく、宇都宮線の電車に乗っていたのだ。
両線は「大宮駅」でホームを共有しているほか、
シンボルカラーが同じなために、混同してしまったのだ。
なにが、「こりゃ、いい旅になりそう」だ、この酔っぱらいめ。
30分前のチャラチャラした自分が憎らしい。

大宮駅まで折り返し、結局、「北本駅」に着いたのは午後2時。
せっかくの休日に、僻地まで3時間かけて、
トマト大福を食べに来たのか……。
私のテンションはガタ落ちである。

駅前には、マクドナルドとコンビニ「デイリーストアー」があった。
「デイリーストアー」こそ、ローカル感を放っているが、
マクドナルドがあると、とりあえず安心する。
人がいそうな気がするからだ。
今度から、マクドナルドが駅前にあるかどうかで、
旅の緊張度を定めていこう、と訳のわからない決意をする私。

それにしても、街ゆく人の姿が見えない。
駅に通じる大通りは、随分前にシャッターを
閉めたと思われるお店が、いっぱいあった。
車の通りも少ない。

建物も密集している訳ではなく、
面積の広い畑がそこら中にある。
ただでさえ広い空が、より広く感じた。

そして、気になったのが、
通りには妙なオブジェが3~4体あったこと。
中学校の前には、スペースに対して
明らかに小さ過ぎる、人型の銅像があった。
しかも、裸である。

あくまで私の憶測だが、
男子生徒からは「粗チン」と呼ばれていると思う。
同じ男として、せめて剥けていることを願わずにはいられない。




20分ほど歩き、トマト大福を売っているというお店に到着。
大人が3人も入れば、ギュウギュウに
なってしまいそうな、小さい大福屋さんだ。
ガラスケースに陳列された商品を見てみると、
スタンダードな大福やお饅頭はもちろん、
チーズ大福という変わり種まである。

が、肝心のトマト大福がない。
売り場はあるのだが、一つも置かれていないのだ。
店主らしきおばちゃんに聞いてみると、
「え、ない? あら、本当だ」といい加減な返答。

もともとが「トマト大福を食べる」という、
それだけが目的の旅なので、それすらも果たせないなんて、
本当に何をしに来たんだろう・・・。

しかし、おばちゃんが言うには、
国道沿いの地域物産館でも、
このお店のトマト大福を販売しているのだという。
しかも、そこには、トマトそばコロッケもあるというのだ。
なんとか、旅の目的は果たせそうである。
嬉しくなり、トマトのあんこが入った「トマトまんじゅう」を購入。
早速、食べてみたが、美味しくもなく、まずくもなく、
芸人さんがリアクションに困りそうな味だった。

物産店に行く前に、平安時代に創建したという神社や、
湧き水の流れているウオーキングエリアがある
「高尾宮岡景観地」という観光スポットに行くことにした。
大福屋から、30分ほどで到着。
「氷川神社」「厳島神社」「須賀神社」という、
3つの神社が隣り合っていた。

平安時代からあるという、「氷川神社」には、井戸があった。
私は、本物の井戸を見たのが初めてなので、少し興奮。
きっと、私くらいの年代の人は、間違いなく
「貞子が出てくる」という想像をしたんじゃないだろうか。
私はした。




でも、こういう、くだらない思いつきをパッと言える人が
一人旅ではいないので、それが少し寂しいな、と思った。
あと、腰の曲がったおばあちゃんが一生懸命お祈りをしていた。
何をお願いしていたのかは、わからないけど、
ご老体にムチを打って神社でお祈りしている姿は胸を打つものがある。

「厳島神社」は、階段を下りて
お祈りするタイプの少し変わった神社だった。
こういう様式のものは、全国でも珍しいらしい。
周りは、社を囲うように円形に湧き水が流れていて、神秘的だ。
ドラクエとかFFに出てきそうだな、と思った。
「須賀神社」は、小さい便器のトイレが印象的だった。




ちなみに、この辺りは縄文時代の大遺跡があった場所らしい。
「厳島神社」の湧泉は、その遺跡の中心にあたるようで、
縄文人の生活拠点となっていたんだとか。
私は歴史には詳しくないが、ロマンあふれる話に少し興奮。
埼玉も捨てたもんじゃないと思った。

ウオーキングエリアは行ける場所が
限られていて、ちょっぴり残念な感じ。
道中には、「北向き地蔵」という地蔵があった。
願い事が叶うと言われているようで、
台座の部分には小銭がいっぱい置かれていた。
私は、氷川神社で見た、おばあちゃんの願い事が叶えばいい、と思った。




本来の目的であるトマト大福と
トマトそばコロッケを食べに、地域物産館へ向かう。
来た道を逆戻りし、駅の反対口へ突き抜け、国道沿いをずーっと歩いた。

一時間くらい、延々と歩いた。
ちょっと歩きすぎだと思うが、タクシーは使わなかった。
私が散歩好きということもあるが、
車に乗っていては気づかないことも、
歩いていれば発見できるような気がするからだ。
あと、なんとか旅っぽさを保とうとしているから。
でも、もうクタクタ。足の芯が痛い。

午後5時すぎ、物産館へ到着。
北本産の野菜がたくさんあった。
農業の盛んな市なのだろう。

「特産品」というポップが目に入ったので、直行する。
あった、トマト大福!  でも、トマトそばコロッケがない。
ウロウロする私。店員さんに聞くと、売り切れたとのこと。

トマト大福も2個しかなかったし、
もしかしたら、人気商品なのかも。残念だけど、仕方がない。
むしろ、食べないでいいのだと思うと、少しだけホッとした。
トマト大福2個と、トマト羊羹(ようかん)、
あとは「トマトちゃん」という、
北本市のマスコットキャラクターのミニタオルを購入。

本当は、市にゆかりのある置物が欲しかったが、
事前に市に問い合わせたところ、「無い」というので、
これを今回の旅の記念品にしようと思う。

帰りに、歩きながらトマト大福を食べてみた。
中にはミニトマトがまるごと1個入っていて、
食べた瞬間にぶちゅっ、とトマトの水分が溢れんばかりに出てきた。
味はというと、芸人さんがリアクションしやすそうな感じ。




旅の目的はこれで終了。
20分ほど歩いて、「鴻巣(こうのす)駅」から帰宅した。





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