埼玉県ゆるゆる全市郡ひとり旅2 ー鶴ヶ島市ー

2010年1月第4週
ー鶴ヶ島市ー

鶴ヶ島市といえば、大学の近くで一人暮らしをしていた時、
近所にCDレンタル店がなくて、自転車で数キロ離れた
鶴ヶ島駅前のTSUTAYAまで行ったという思い出がある。
部活の友人も住んでいたので、何度か泊まりにも行った。

しかし、それ故に不安になる。
あの街、なんかあったっけ。

……あった。

市のホームページを見てみると「脚折(すねおり)雨乞い」という
イベントの様子が画像付きで掲載されている。
雨乞い行事で、江戸時代から同市に伝わる行事とのこと。
国の無形民族文化財にも指定されている。

概要を簡単に説明すると、江戸時代、
同市にある雷電池(かんだちがいけ)には、
大雨を降らしていると信じられた大蛇がいた。

しかし、その蛇は新田開発により、
住みにくくなった鶴ヶ島市から、群馬県へ大移動。
たちまち、この地は、干ばつ被害に見舞われた。
困った村人は、竹と藁(わら)で長さ36メートル、
重さ3トンの、龍の形を模した「龍神」さまをつくり、
それを担いで雷電池で池の中で雨乞いの儀式をした。

すると、恵みの雨が降り、村人は大喜び。
以降、この行事は受け継がれ、
今では伝統行事として市民が行なっている
……のだという。

ホームページの画像を見ると、
民家と同じくらいに顔が大きい龍神さまを、
人々がいっせいに担いでいる。
すごい迫力である。見たい! 

いつ行なわれるのだろうかと調べていると、
「次回の開催は2012年です」の文字。
なんと、4年に1度しか行なわれないのだという。
オリンピックとか、「こち亀」の日暮とか、そういうレベルなのだ。

しかし、サイト内を見てみると、
「雨乞いゆかりの地を歩く」というページがあった。
同行事のゆかりの地を歩くというもので、
ウオーキングの途中には、牛舎があり、牛を見られる。

さらに、龍神さまをモチーフにした
張り子「りゅうだくん」の置物が市役所で販売しているという。
置物好きな私は「りゅうだくん」に興味津々。
こうして、鶴ヶ島市の旅は始まった。


正午過ぎ、今回の旅の出発地点に到着。
前回と同じ東武東上線「坂戸駅」である。
なんというデジャヴ。

鶴ヶ島市は、坂戸市に隣接しているため、
場所によっては沿線の「鶴ヶ島駅」より「坂戸駅」のほうが近いのだ。
でも、前回とは反対口だったので、なんとなく良かった。

今回は、鶴ヶ島市のホームページでウオーキングのルートが書かれてある
地図をダウンロードできたので、それに沿って歩くことにした。

地図は簡略化されており、見る限りでは
駅からそんなに遠くもないのだけれど、
歩いても歩いても、目印となる交差点が見えない。
一本道だから間違えようがないので、不安になる。

しかし、「間違っているはずがない」と30分ほど歩くと、
ようやく目印の交差点に着き、ホッとする。
観光地ではない住宅街を歩く以上、
これからもこういうことは多いんだろうなと思う。

交差点を曲がると、「一発」というラーメン屋さんがあった。
私は、こういう文言を見ると、すぐに卑猥な想像をしてしまう。
「一発ヤらせて」とか、そういう言葉が瞬時に頭に浮かぶのだ。
物書きとして貧困すぎるイマジネーションである。



……と、くだらないことを考えながら歩いていたら、
最初の目的地であるお寺を通り過ぎてしまっていた。

慌てて引き返して、善能寺という
お寺へ着いたのだが、よく印象に残っていない。
実際、地図の紹介を見ても、何があるのかよく判らなくて、
申し訳程度に1分ほどいて、次の目的地である白髭神社へと向かった。

ここには、「脚折大けやき」という、
幹が途中で折れてしまった、樹齢700年のけやきがあった。
とにかく大きいが、折れているというよりは、伐採されたような感じ。

折れている理由が木のふもとの看板に
書かれていたような気がするが、あまり覚えていない。
「あまり覚えていない」の連発に
呆れている読者の方もいるかもしれないが、
この時、すでに頭の中は「牛」でいっぱい。

旅の目的は、散策ではなく、「牛を見る」ことと、
「りゅうだくんを買う」の2つに絞られていた。

しかし、そんな考えにバチが当たったのか、
ここから道に迷ってしまい、いつまで経っても、
次の目的地である「牛舎」にたどり着けない。

地図を見ながら、右往左往する私。
同じ場所を何度も通った。
服は黒づくめだし、はたから見たら怪しいと思う。

数日後、この近辺で何か事件が起きたら、
「不審者を見た」と真っ先に私のことを
挙げられてしまうんじゃないだろうか。

結局、30分近くさまよった挙げ句、
前を歩いていたスクールパトロール(?)の人に道を聞くことにした。

「うーん、ここはー、うーん。どうやって行くんだろうなー」

地図を見ながら、考え込むおじさん。
「あっちじゃない、こっちじゃない」と、
地図をくるくる回して考えている。

時間をロスして急いでいた私は、
わからないなら「わからない」と言ってくれ、と少しイライラしていた。
相変わらず、地図をくるくる回して考えているおじさん。

「あと、もう一回、地図を回したら『もういいです』って言おう」
そう決めた矢先、「わかったぞ!」と、おじさん。
途中まで道案内をしてくれた。

道中、「散歩?」と聞かれ、「埼玉県を巡る旅をしているんです」と答えた。
「趣味で?」と聞かれ、「一応、物書きです」と答える自分。
なんとなく、恥ずかしい。

別れ際、「おれのこと書いてくれよ」と、おじさんは無邪気に笑う。
元プロレスラーの高田延彦さんに声がソックリだった。
終始、頭の中で、おじさんが「出てこいやっ」と
言っている姿を想像していた。
本当にしょうもない。

おじさんの協力もあり、ようやくお目当ての牛舎に到着。
牛が1匹いる! 嬉々として近寄ると、臭い。

よく見ると、糞のようなものが大量にある。
鼻がひん曲がりそうだったが、牛はとても可愛かったし、
「埼玉で牛を見た」という事実が私をウキウキさせていた。
少し非日常な感じがして、楽しかったのだ。



さらに歩いて、鶴ヶ島市役所へ。
6階にある喫茶店「どんぐり」で「りゅうだくん」を買うのだ。
営業時間が午後4時30分までだったが、
なんとか4時に到着できた。

売り切れてないかな、と少し心配だったけど、
大して人気もないのか、小さいワゴンの中に所狭しと
「りゅうだくん」は並べられていた。

龍神さまがかなりデフォルメされており、とても愛らしい。
ただ、「りゅうだくん」だけを買うのは、
旅の目的を察せられそうで恥ずかしかったのでコーヒーも注文した。

「どんぐり」では、おばちゃんグループが楽しそうに話していた。
何を話しているのかはわからなかったけど、
大口を開けてケタケタと笑っていて、とても楽しそうだった。
自分の妻も、将来はあんな風に笑っていればいいな、と思った。

牛を見て「りゅうだくん」を購入し、
旅の目的は果たしたが、ウオーキングの目的地があと一つ残っていた。
せっかくここまで来たのだから、全部行きたい。

コーヒーはおかわり自由だったけど、
陽が暮れそうだったので、1杯で店を後にした。

最後の目的地は「雷電池」、龍神さまが住んでいたという池である。
足が大分疲れていたが、ここでまた道を間違えてしまった。
実は、牛舎から市役所に行くまでの間も道に迷った。
どれだけ道に迷えば気が済むんだ。

20代半ばにして、完全に迷子である。
地図をくるくる回しながら、「雷電池」に到着した。

一帯は公園になっていて、子供が走り回っていた。
池はというと、水がキレイで魚も泳いでいたが、
どうも昔のものは埋め立てられたのか、人工の池のようだった。

帰りは、最寄りの東武東上線「若葉駅」から帰宅。
歩きっぱなし、迷いっぱなしの一日だった。

「りゅうだくん」は、前回の坂戸市で買った、だるまの横に飾っている。
こうして、記念品が増えていくのは、とても楽しい。



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